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家族じまい

2021.03.02

桜木紫乃
集英社 定価:1,600円+税

北海道は広い。寒い。だからこそ、人の温かさが染みる。桜木紫乃の小説は、北海道という土地が放つ空気感を丸ごと体現する。 ドライで、徹底的に客観的で、根底に情がある。本作で描かれるのは、ありきたりな家族の風景。それが著者の手にかかると、 冷たいような温かいような独特な温度をもった物語になる。
家族の絆を信じていない姉、親子ほど歳の離れた男に嫁いだすえ、夫以外の男から子種をもらう若妻、娘から縁を切られる母親。 「家族」というフォーマットからはみ出そうとする北国の女たちは、生々しい現実を突きつけられても嘆かない。きっぱりと清々しい。 「家族」というしがらみと戦うと同時に、自分が信じるもののなかに温かさを見出して生きている。
誰もが、さすらっている。さすらっているけれど、人生という地に足をつけている。その風通しの良さとたくましさが、 読み手にエネルギーを与えてくれる。

 

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