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性教育に対する看護職の貢献

2020.05.01

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小山田万里子(日本医療政策機構 副事務局長)

自治体における性教育事業の現状

性が自身のライフプランを主体的に選択していくためには、 若い世代のうちから性や健康に関する正しい知識を得ておくことが重要である。
一方、学校教育活動全体を通じて性教育の充実に努めるという国の方針はあるものの、その実施状況は地域によってばらつきがある。 そこで、日本医療政策機構では、女性の健康増進プロジェクトの一環として 学校教育における性教育の推進に寄与することを目的に「自治体による性教育事業の好事例収集」を実施した。 性教育分野では、様々な組織や個人が多様な取り組みを行っているが、本調査では都道府県が教育機関と連携して実施している性教育事業に注目した。 そのなかでも以下に該当し、かつ独自性があると思われる事業を好事例として定義した。

①性教育事業に対する明確な方針が定められ、事業が予算化されていること
②都道府県の課題を踏まえたテーマが設定され、少なくとも3年以上実施されていること
③地域の主要ステークホルダーと連携していること

公開資料の確認に加え電話でのヒアリングを実施した結果、 最終的に、青森県、群馬県、埼玉県、新潟県(県と連携している保健所として、柏崎市、十日町市、南魚沼市)を好事例とし 自治体の事業担当者や医療提供者に話を伺った。
なお、青森県、群馬県、新潟県は特に生徒を対象とした外部講師による出前授業に、 埼玉県は 体育・保健体育の教員や養護教諭、保健主事を対象とした情報提供や研修に力を入れている。

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性教育事業成功のポイント

①性教育の実施に対する明確な方針

いずれの自治体においても、都道府県として定めた方針に基づき、事業が実行されていた。
例えば青森県では「産婦人科校医制度」が県全域を対象に実施されており、 産婦人科医が県立高等学校および特別支援学校高等部の校医として配置されるほか、 年に1度は学校での授業も実施されている。
また、群馬県では県の教育計画において、公立の小・中学校及び県立の高等学校を対象に、 専門家による性・エイズ教育講演会講演会を実施することだけでなく、 実施率100%が達成目標として掲げられていた。

②地域のニーズに合ったテーマ設定

地域の医療提供者や教育関係者と自治体による議論に加え、 学校現場や生徒のニーズも踏まえ、重点的に扱うテーマが決定されていた。
例えば新潟県では、県の「特定感染予防事業費(エイズ対策促進事業)」を県内12か所の保健所に分配して性教育事業を実施しているが 具体的な実施内容については、各保健所が中心となって地域のステークホルダーと議論しながら決定していた。 いずれの自治体においても都道府県として定めた方針に基づき、事業が実行されていた。

また、いずれの自治体においても国の学習指導要領をベースとしながら、 性情報の氾濫や子どもたちを取り巻く社会環境の変化を踏まえ、 その地域で特に課題となっているテーマを取り上げていた。
具体的には、これまでも重視されていた望まない妊娠・出産、性感染症に加え、 月経に伴う症状(月経前症候群や月経随伴症状)への対処、月経のコントロール、不妊を含む妊娠の仕組み、 デートDV、性の多様性(LGBT等)、がんといった多岐に渡るテーマを扱っていることが多かった。

これらのテーマについては医学的な専門知識も必要であることから、 地域の産婦人科医や助産師、保健師等の医療関係者も授業や研修の講師として参画していた。

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③ステークホルダー間の有機的な連携

都道府県レベルでの教育機関向けの性教育事業は、 学校保健教育担当部門が主として実施することが多いが、 外部講師の紹介や個別の健康課題の情報提供等については、 各都道府県の健康・医療関連の別部門とも横断的に連携していた。
また、地域の医師会や歯科医師会、薬剤師会、看護師会、助産師会等の専門家と連携し 事業内容へ現場の意見を反映したり、安定的に外部講師を派遣したりしていた。 いずれの自治体においても都道府県として定めた方針に基づき、事業が実行されていた。

性教育事業成功のポイント

今回取り上げた好事例では、事業内容の議論に看護師が参加する 助産師や保健師が授業や研修の講師になる等、看護職の方が関わっていることが多かった。 授業や研修の実施にあたっては、地元の医療提供者が外部講師となることで専門知識の提供に加え、 地域の課題や具体的な事例も伝えることができる。
特に生徒に対しては、外部講師の授業は興味を惹くため、より記憶に残りやすく効果的という声が多く聞かれた。 このように、子どもたちが正しい情報を得て理解し、行動変容に繋げるための取り組みに対し看護職が貢献できる部分は大きい。
今後もぜひ積極的にご協力いただき、女性の健康増進の一助となっていただきたい。

※本稿はインタビューを実施した2017年11月12月時点の情報を元に執筆しました。

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