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ライターが教える、わかりやすい看護記録を書くコツ

2021.10.09

野田 裕貴 のだ・ひろたか

看護師の大切な仕事の1つ、看護記録。「仕事で毎日書いているのに、なかなか思うように書けない」と悩む人も多いのではないでしょうか。わかりやすい看護記録を書くためには、医療の知識だけでなく文章を書く基本的な能力も必要です。
この記事ではライターとして活動する看護師が、わかりやすい看護記録を書くための文章のコツをご紹介します。看護記録に悩む人は、ぜひ試してみてくださいね。

看護記録をわかりやすく書かないといけない理由は?

なぜ看護記録をわかりやすく書く必要があるのか、その理由は看護記録の目的や役割にあります。
日本看護協会は2018年に示した「看護記録に関する指針」の中で、目的をこのように定義しています。

看護記録の目的は、「看護実践を証明する」こと、「看護実践の継続性と一貫性を担保する」こと、「看護実践の評価及び質の向上を図る」ことである。

引用:「看護記録に関する指針」公益社団法人日本看護協会、最終アクセス:2021年10月5日

どれだけ素晴らしい看護をしたとしても、看護記録で伝わらなければこれらの目的を達成することは難しいでしょう。 また訴訟が起きたときには法的証拠として、診療報酬算定のときには判断の材料として、看護記録には事実を証明するという役割を持ちます。

このような目的や役割を果たすために、看護記録はすぐに伝わり、誰にでも理解できるよう、わかりやすく書く必要があるのです。

すぐにできる、看護記録をわかりやすくする文章のコツ

看護記録に必要な経験や知識はさまざまですが、今回はすぐに実践できる文章のコツをお伝えします。

長文はNG、1文に詰め込みすぎない

ダラダラと長い文章は、途中で何を言いたいのかわからなくなったり、主語が誰なのかわからなくなったり、間違って伝わる可能性が高くなります。言いたいことを1文に詰め込みすぎるのはNGです。パッと読んで理解できるように、1文の中で伝えることは1つに絞り、適度に短く切りましょう。

詰め込みすぎた例をご紹介します。

悪い例 ×

同室の患者Bから、患者Aが転倒しているとナースコールあり訪室すると、患者Aのベッドの近くの床に仰臥位になっている患者Aを発見し、声をかけると「ベッドに座っていて力が抜けてずり落ちた」と返答があり、ナースコールで応援を呼び、全身状態観察とバイタルサイン測定を行った。

このような長い文章では、情報を整理しづらく、理解するのに時間がかかってしまいます。1文を適度に短くすると、次のようになります。

良い例 〇

同室の患者Bから、患者Aが転倒しているとナースコールあり。訪室すると、患者Aがベッドの近くの床で仰臥位になっているところを発見。声をかけると「ベッドに座っていて力が抜けてずり落ちた」と返答あり。ナースコールで応援を呼び、全身状態観察とバイタルサイン測定を行った。

すべてつながっていた1文を複数に分け、少し言葉を調整しています。

変更した文章のほうが1文が簡潔になり、場面がイメージしやすいのではないでしょうか。1文の長さの目安は30~50文字がよい、60文字以内にすべき、などいくつも説がありますが、どの文章にも当てはまる厳密な正解はありません。文字数にこだわるのではなく、1つの文には1つの意味だけをこめる、という意識をしてみましょう。

1記録に1テーマ

1つの文にあれこれ詰め込まないのと同じように、1つの記録の中ではテーマを1つ決め、軸がぶれないようにしましょう。欲張りすぎてあれもこれもと情報を詰め込むと、何を言いたいのかわからなくなってしまいます。「この記録では何を伝えたいのか」を意識しながら、不要な情報は削除して簡潔に書くことが大切です。

常に一貫した内容を書くように、1記録に1テーマを心がけましょう。もし伝えたいテーマとは関係なくても残しておきたい情報があれば、新たに記録を作成して記載するという方法もあります。

主語と述語をハッキリ示す

わかりやすい文章を書くためには、誰が、どこで、何をしたのかなどをハッキリ示すことが大切です。便利な方法の1つに、5W1H(だれが、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように)を用いる(意識する)ことがありますが、特に注意すべきなのが主語と述語をハッキリ示すこと。

SOAPの場合、Oデータは患者さんの客観的情報以外に、家族や看護師がしたことを記述することもあります。「この患者さんの記録だから、わざわざ『患者Aは』と書かなくてもいいだろう」では伝わらないことも。例えば「藥袋を破り、食後の内服薬を服用した」という文章では、藥袋を破ったのが看護師なのか患者さんなのかわかりません。誰が、何をしたのか、主語と述語をハッキリ示して、誤解されない文章にしましょう。

中学生でもわかるように書く

チーム内で情報共有するためには、他の職種のメンバーが理解できる文章であることが大切です。またカルテ開示の要望があれば、患者さんが記録を読むこともあります。
誰にでもわかりやすい文章を書くコツが、中学生でもわかるように書くという方法。例えば複雑な言い回しを避けたり、難しい漢字を言い換えたりすると、簡単でわかりやすい文章に近づきます。

看護記録は上手に書こうとする必要はありません。目的や役割を考えて、誰にでもすぐに伝わるようにすることが大切です。そのために、中学生でも分かるように書くことを意識してみましょう。

わかりやすい記録を書く人を真似しよう

自分なりに工夫することも大切ですが、真似することも上達する効果的な方法です。あなたがわかりやすいと感じる記録を見ながら、真似して書いてみましょう。
わかりやすい文章には、ちゃんと理由があります。

「なぜこんなにわかりやすいのか?」、「私の記録とどこが違うのか?」という視点で考えながら、良いところをどんどん取り入れましょう。
どうやったらわかりやすく書けるのか、その記録を書いたスタッフに直接教えてもらうのもおすすめです。

まとめ

今回は看護記録をわかりやすく書くために、すぐに実践できる方法をお伝えしました。なかなか思うように書けないと悩む人は、まずはこの記事でご紹介した方法を試してみてくださいね。


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著者プロフィール

野田 裕貴 のだ・ひろたか

看護師・ライター
名古屋市在住 山梨大学医学部看護学科卒。
藤田医科大学病院で11年勤務し、ライターへ転身。 非常勤で看護師として働きつつ、書籍の執筆協力、 企業Webサイトへの記事執筆、Webメディア運営などを行う。
https://www.medicaproject.com/

日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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