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ナースのための判例解説④
新型コロナウィルスと闘うみなさんへ

2020.06.01

友納理緒(弁護士)

新型コロナウィルスは日本全国に拡散し、いまだに完全な収束の見通しは立たない状況にあります。 医療の最前線にいる皆さんは、直接的または間接的にこの未知のウィルスと闘っていらっしゃるものと思います。 そこで、今回は、法的な側面から新型コロナウィルスに関連する問題について扱います。

職場で新型コロナウィルスに感染してしまった場合について

看護職が、看護の業務に関連して、新型コロナウィルスに感染した場合には、 業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。 この場合、療養補償(いわゆる治療費など)だけでなく休業補償もなされます。

厚生労働省HP 「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)


新型コロナウィルスは指定感染症として定められ、業務上・外の感染であるかを問わず その医療費は公費で支払われますが、休業補償まではされませんので労災保険給付は重要です。

自身や家族が不当な差別などを受けた場合について

現在、医療現場で働く皆さんへの感謝の声が広がっています。 皆さんの存在がなければ、この苦境を乗り切ることはできないのです。 にもかかわらず、一部では、医療者やその家族に対する不当な差別や偏見、 中傷が報道されています(保育拒否や親の出入り禁止、タクシーの乗車拒否など)。
この問題について日本看護倫理学会は、「新型コロナウィルスと闘う医療者に敬意を」という声明を公表しました。 そのなかで、同学会は、「医療に携わる人たちが、日夜懸命の努力を行っている中での誹謗中傷、そして差別は、 その士気を下げることにつながります。一人でも多くの人を救うために努力している医療従事者の尊厳を守ってください。」と訴えています。
新型コロナウィルスに関連して、医療者やその家族を不当に差別したり、 偏見や中傷をあびせることは、明らかに人権を侵害する行為です。 倫理的にも法的にも許されない行為です。 仮に、皆さんが差別や偏見を受けてしまった場合には、そのような声には耳を貸さず適切な対応を求めましょう。 適切な対応がなされない場合には、国(法務省)や自治体、関係団体などに相談したり、弁護士などに助けを求めてください。

臨床現場の皆さんへ

新型コロナウィルスに関連して様々なご不安もあると思います。 医療一般については、厚生労働省や自治体、看護のことについては、 日本看護協会ほか各看護関係団体がQ&Aの公表や相談窓口の設置など対応をしています。

日本看護協会HP「新型コロナウイルス感染症に関する看護職の相談窓口


上記のような人権侵害には弁護士への相談も有効です。 不当な差別などに対し、書面で是正を求めたり、インターネットによる中傷の場合には、 その情報の削除や相手方の特定を行い損害賠償の請求などを行うことができます。
皆さんを応援している人、力になりたいと考えている人はたくさんいます。 皆さんが声をあげることで問題が顕在化し、その後の差別防止にもつながります。 決して一人で我慢をしないこと、今はこれが大切です。

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著者プロフィール

友納 理緒  とものう・りお

弁護士・土肥法律事務所・第二東京弁護士会所属
2003年 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科卒業 (看護師、保健師免許取得)
2005年 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士前期課程修了
2008年 早稲田大学大学院法務研究科修了
2011年 弁護士登録
2012年 都内法律事務所 (新宿区) に勤務
2014年 衆議院議員政策担当秘書として出向(~2016年12月)

日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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