レポート
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ワークライフバランスが言われるようになるまで

2022.01.18

山田 洋一 やまだ・よういち( 島根県立中央病院 / 島根県看護連盟青年部 )

看護職に就く前は政治のことなんて考えなかった

私は、看護職に就く前に、4年半ほど会社勤めをしていました。その頃は、一度も選挙に行ったことがありませんでした。毎日残業で、時には会社に泊まるような仕事をする中、とても選挙に足を運ぶ余裕などなく、そもそもそんな切迫した生活に政治との関係性など感じる暇すらありませんでした。一人で仕事をさばくことができず、上司が人を投入して補おうとするも、その管理が追い付かず、さらに仕事が増えるという悪循環。結局、その働き方が続かず、退職することになったのですが、今思い返すと本当に閉じた世界の中で悩んでたし、救いがなかったように思います。

あの時は、自分が辞めたら担当している仕事が回らず会社が困るだろうと必死になっていましたが、そのプロジェクトが頓挫したという話は聞かず、案外独り相撲だったんだな、と今では思います。

政治に参加する権利を知っているのかな

仕事を辞めて、次の進路を考える上で実家に帰った私に、母が看護の道を進めてくれました。強制するわけでもなく「最終的にやらなくても資格は残るから。何もせずに先を考えると煮詰まるだけだしね」と後押しされて看護学校に通い始めました。10歳近く離れた同級生と過ごす中で、自分がいかに世の中に無関心だったかを痛感しました。在学中に成人していく同級生たちは、それと同時に選挙権を得ていきましたが、半数が寮生ということもあり、選挙に足を運ぶ人は少なかったです。私も、同じ年頃には投票に行ってなかったので、そういうものかとも思いました。

ただ、これから社会人として世間に出て働き始める中で、自分が経験したような壁にぶつからないかなと、自分が持っている権利について、どれくらい分かっているのかなと不安になったのを覚えています。

法律を知らないことで困難な状況に陥ることもあるのでは?

実際に、看護職として改めて就職してから、前職での経験が働き方を考えさせるきっかけになっていました。現在は、以前のようなブラックな要素を感じることなく働けています。きっと、前職を辞めた時に身の回りに迷惑をかけた引け目から、そうならないようにという思いで気を付けてしまっているのかなと思っています。また、看護学生時代に、実家の仕事を手伝う中で、就業規則の作成など事務仕事をする中で得た法律的知識も、働き方を見直すきっかけになりました。

労働に関する法律を、多くの人はあまり理解しないまま働いているのではないかと思いました。私は、前職での失敗をきっかけに労働法規を意識するようになりましたが、そのような状況にめぐりあえる人も多くないのではないでしょうか。もちろん、そんなネガティブな状況にはめぐりあわない方がいいのですが、法律を知らないことが原因で仕事と生活のバランスが取れなくなっていき、生活が崩れていくとも考えられます。

ワーク・ライフ・バランスは個人の努力だけでは改善できないと思う

ここ数年、ワーク・ライフ・バランスという言葉をよく聞くようになり、労働環境に目が向けられるようになってきました。しかし、これも個々人の努力で改善するのは限界があり、国の規模での動きが必要だろうなと思います。

社会人経験者として、看護学生時代の友人から仕事について相談されることがあります。前職の経験があるので、仕事が個人の生活を蝕まないように、無理がないように一線を引くようにアドバイスしています。そんな相談にのりながら、もっと広く、若者たちの働く環境を守るのは、政治の役割だろうと考えるようになりました。

若者たちの働く環境を守る法律を作るのは政治だから

看護職に就いてから、選挙に必ず行くようになりました。各政党の政策についても、ところどころ分からないながら、少しずつ知るようになりました。そのような姿勢で接すると、政治が身近になったような気がします。自分から政治に関することを遠ざけていたのを知りました。確かに細かいことまで勉強するのは大変かもしれません。でも、自分の興味があることからでいいんだと思えるようになりました。自分に関係あることから紐解いていくのでいいっていうのを知りました。

私の場合は、前職での経験から労働に関する法律や制度に関心をもつようになったことから、政治について知ろうというきっかけを得ました。その法律や制度を作っているのが政治だからです。労働や納税について、若い世代が「?」を浮かべているときに助言できることが多くなりました。実際に働く上で必要な知識だと思います。同じように若い人たちが政治に触れて、参加する機会が得られることを願うばかりです。

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