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					マイケル・サンデル 著  鬼澤忍 訳
早川書房 定価 2,530円
				
貧しさや差別など数多の困難を乗り越えるには、教育が重要とされてきた。高等教育を受け、能力を高めることで誰もが成功できる──こうした、能力主義的発想がまやかしだとしたらどうだろう?
    
そもそも高等教育を受けるための機会は平等ではない。さらに、学歴や高い能力を評価することは、
    それらをもつ人間をうぬぼれさせ、それらをもたない人間に劣等感を抱かせる。収入や社会的評価の
    不均衡は、両者の間に分断を生む。この分断が欧米各国での右派の台頭を導き、米国でのコロナ禍に
    おける社会の機能不全を招いたと著者は指摘する。
    
教育や能力を否定しているのではない。問題は学歴偏重主義であり、低所得者層が奪われているのは
    知性ではなく社会からの敬意、労働の尊厳の有無ではないか。本書が求めるのは、完全な平等は困難であっても、
    開きすぎた格差を縮める努力をする社会だ。
    
著者は、「白熱教室」で知られる、ハーバード大学の哲学教授。「教育」がすべての問題を解決すると
    考えてきた人間は、目を醒まさせられる一冊だ。
        
(紹介:大橋礼子)
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