レポート
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全ての人に”家に帰る”選択肢を~岩本大希さん

2025.03.28

WyL (ウィル)訪問看護ステーションの代表者・岩本さんは訪問看護の可視化をめざして「オマハシステム」も導入。看護の効果を政治や政策に繋げる取り組みにもチャレンジしています。2024年の日本在宅看護学会学術集会長も務め、在宅看護の先を走る岩本さんに看護連盟への期待を伺いました。

岩本大希さんは大学卒業後、救命救急センターに勤務。そこで「転院先が見つからない患者さんでも、訪問看護という“受け皿”があれば、自宅に帰れるのでは」と感じて、訪問看護の世界に飛び込みました。

その後、「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に独立し、「あなたの価値とともに、人生をともに」家で暮らす・暮らしたい人々へ訪問看護を提供しています。
岩本さんの想いに触れて、同じ道を歩む仲間はどんどん増えています。今では北は岩手・一関から南は沖縄・石垣まで、31事業所で100名近い仲間が、WyLの訪問看護を実践中。その生き生きとした姿はWyLのホームページに登場するたくさんのスタッフたちから溢れ出ています。

「WyLでは、利用者や家族に最適な看護を提供することと同じくらい、スタッフである看護師がワクワクしながら安心・安全に看護に取り組めるための環境づくりを大切にしています」と言う岩本さん。
自分のやりたい看護に悩んでいる人にとって、WyLのホームページは必見のページかもしれません。

訪問看護を“可視化”することの効果

WyLの訪問看護が注目を浴びるのは、患者・利用者、家族の想いに寄り添う訪問看護を実践しているからだけではありません。
岩本さんは言います。
「訪問看護は本当に楽しいんですよ。訪問看護師がよいケアをすることで利用者さん、家族の生活は必ず変わっていきます。ただ、その効果について、今まではナラティブな報告、訪問看護師の経験談でしか表されていなかった。それだけでは訪問看護を利用していない多くの人に理解してもらうのは難しいでしょう。訪問看護師の介入による効果を目に見えるかたちで証明したいと思い、オマハシステムを導入しました」

オマハシステムは、看護ケアを“見える化”し、“アウトカム”を測定できるシステム。ケアの質の評価・向上に寄与が可能と、岩本さんはその活用を広げることに関わっています。

在宅看護の処遇改善を進めたい

この3年間、看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料などが実現しました。きっかけは神奈川県看護連盟青年部の実施した調査を、石田まさひろ参議院議員ら看護職の国会議員が注目し、国政の場で取り上げたことです。

岩本さんも「訪問看護の効果を見えるかたちにして証明しなければ、政治は動かないし、政策も生まれない」と感じています。
「看護職の処遇改善が進みましたが、まだ訪問看護では不十分だし、介護保険施設で働く看護師は対象にもなっていません。生きていく上での健康に関する問題解決をし、人生へ寄り添う看護を提供するためには、在宅・地域の看護師が元気でなければ!」

と言う岩本さんが期待するのが看護連盟の存在。日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会の3団体が、調査・研究等で在宅看護のエビデンスを明らかにしていても、なかなか、それが政策に結びつかない状況にあります。政策を制度に繋げるために大切なのは、政治の場にいる看護職議員の働きで、その議員を支援する看護連盟に注目しているのです。

「地域・在宅の看護職の数は少ないけれど、これからますます重要な役割を担います。私も看護連盟の会員なので、現場の声をもっと議員に伝えていきたい。現場と政策を繋ぐ役割ができたらと思っています」

(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2025 年早春号 No.552)
( cover image by 写真AC )

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プロフィール

岩本 大希 Iwamoto Taiki

ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長
WyL株式会社代表取締役/在宅看護専門看護師
慶應義塾大学看護医療学部卒業後、北里大学病院救命救急センターICU勤務。
2012年ヘルスケアベンチャー企業で訪問看護事業の立ち上げ
運営を経験後、独立して2016年WyL株式会社を設立。
東北から沖縄まで31カ所の訪問看護ステーションを運営
オマハシステムジャパン
WyLの訪問看護

日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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