2025.03.17
自身の原体験から「1人でも多くの人が辛く悲しい目に遭わないように」と、お守り型のセキュリティアイテム「omamolink」を開発した石川加奈子さん。
1人で利用者宅を訪問する訪問看護師が暴力・ハラスメントを受けるケースが報告される中、訪問看護師の安心・安全を高める注目の機能を紹介します。
訪問看護師への暴力が散見される
2024年3月、厚生労働省が「訪問看護師と訪問看護ステーション管理者の方へ 安心・安全のために防犯機器の使用をご検討ください」というチラシを発信しました。訪問看護師が「物を投げてくる、大声で怒鳴る」「刃物を持ち出し威嚇する」「居宅内に閉じ込められそうになる」等の心身の危険を感じる状況になるケースが散見されるとのことで、注意喚起をしたのです。
そのチラシの中に「1人で密室である個人宅に伺うことが多いので、いざという時に簡便で速やかに対応してもらえる防犯機器の携帯は〝お守り〟のような安心感があります」という訪問看護師の声が掲載されています。そして、まさにその〝お守り〟に役立つセキュリティ機能を搭載した「omamolink(オマモリンク)」が2022年5月に誕生しました。
訪問看護師を守る4つの機能
オマモリンクは、ボタンを押す&振るだけで起動する「振動検知機能」、相手を威嚇&周囲にピンチを知らせる「ブザー機能」、危険時には、事前に登録された人のスマホアプリに位置情報がすぐに届く「SOS発信機能」、そして時間・場所・録音データが紐づいて証拠を残せる「自動録音機能」を有しています。
特に、セキュリティ会社を通さず、所長にすぐに連絡される発信機能は、訪問看護の現場に大きな安心・安全をもたらすといえるでしょう。
重さわずか36グラムでグッドデザイン賞も受賞したオマモリンク、本物のお守りのように中に内符を入れておくこともできます。本体を入れる可愛いデザインのもの、ケースに入れたままでボタン操作・充電が可能な形状のカラビナ付きのものなど、さまざまなケースも数多く用意されています。
利用者へのケアの質担保にも
「高校生から20代にかけて、たびたび性被害に遇って、今でもフラッシュバックすることがあります。私と同じ悲しみを味わってほしくない、と考えてオマモリンクをつくりました」と言うのは開発者の石川加奈子さん。石川さんはさらに「元々は性暴力被害や急な体調不良など、日常に潜むリスクから自分や大切な人を守るための選択肢の1つとして人々に持っていただくことを主眼としていましたが、訪問看護などにおいても、有事の際のスタッフの安全確保にお役に立てるのではないかと思っています」と語ります。
そんな石川さんは、実の母と祖母が共に自宅に1人でいるときに倒れ、亡くなっています。
「発見が早ければ救えたかもしれない、と今も思っています。自分の身に危険が迫ったとき、簡単な操作でSOSを知らせる機能があるオモマリンクを、例えば独居の利用者さんに持ってもらえれば、もしものときを回避できるかもしれません。訪問看護ではそんな利用もしていただけると思います」
訪問看護師の安全と利用者のケアの質、その両方を高める可能性をオマモリンクは持っています。
プロフィール
早稲田大学卒業後、内閣官房内閣情報調査室にて情報収集・分析業務に従事。
2013年渡米し、米NPO法人で総務開発部長を務める。その後帰国しコンサルタントとして独立。
2019年春にMBAを取得、同年7月株式会社grigryを設立
(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2024年秋冬号 No.551)
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