レポート
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「曼荼羅チャート」を 連盟活動の核として取り組む

2024.08.02

濵田 みね子さん(熊本県看護連盟 / 熊本4支部 支部長)

楽しみながら目標達成へのチャレンジ

熊本県看護連盟熊本4支部では、「曼荼羅チャート」を活用した取り組みで、会員増という目標を達成しています。なぜ取り入れたのか、どのように活用しているのかなど、どの支部でも参考になる実践を、支部長の濱田みね子さんが報告します。

曼荼羅チャートを活用しようと考えた経緯

熊本県看護連盟熊本4支部では、2023年度から「曼荼羅チャート」(図1)を目標シートとして活用し、支部役員11名、施設連絡員7名、部署連絡員81名の総勢99名で連盟活動を行っています。

2023年度は、前年に継続して日本看護連盟の重点方針が「見える活動、行動する会員、確かな組織づくり」と打ち出されました。「この方針をもとに47都道府県の看護連盟から重大な事業計画が生み出されていく」と考えたとき、熊本県看護連盟の一角の支部として、どのように支部活動を行えば、その方針に寄り添ったものとなるのか、試行錯誤を繰り返し、行き着いたものが「目標の見える化」でした。

図1 曼荼羅チャート

そこで会員増を目指すに当たり、「目標の見える化」の発想を膨らませていく中で、2023年度は「支部幹事の施設のみ」を対象として、まず以下の5構想をクリアできるものでありたいと考えました。

〈会員増を目指すための5構想〉

①「熊本4支部が目指す会員数」がはっきりと紙面に記され、熊本4支部圏域の対象施設に共有される形になること

②「支部幹事の各施設で目指す会員数」がはっきりと紙面に記され、熊本4支部圏域の対象施設に共有される形になること

③各施設が固執することなく、自由な発想で、実現可能な具体的活動が記され、熊本4支部圏域の対象施設に共有される形になること

④会員増に向かっての具体的活動が各施設の看護部長や施設長など施設管理者と合意の上で発信されるものであること

⑤支部幹事や施設連絡員、部署連絡員がプレッシャーやストレスを感じるものではなく、少し背伸びの精神と思いつつも、楽しみを見いだしながら、目標達成に向けて頑張れるものであること

しかし、このような構想を掲げて実際に進めようとしたものの、なかなか施設間を共有させるツールをつくることはできず、その難しさが浮き彫りになってきました。「見える化できるもの」「多施設でその活動が共有できるもの」という言葉だけが先歩きしてしまい、解決の糸口が見つからないまま時間が過ぎていきました。

〈大谷選手の曼荼羅チャート〉

そのようなとき、ネットの中で出会った、ある1人のスポーツ選手の目標達成に向けた取り組みの素晴らしさに目が釘付けになりました。それは、今や、世界で大活躍中の野球選手・大谷翔平さんです。

彼は17歳のときから目標シートとして「曼荼羅チャート」を活用していました。そして、「ドラ1 8球団」(8球団からドラフト1位指名を受ける)という「達成したい目標」を掲げ、チャートに沿って、「目標達成に必要な要素」を8つ掲げました。
さらに、その1要素ずつに対して「要素を実現するために必要な行動」を掲げたのです。大谷さんは、この曼荼羅チャートをもとに努力し、結果「ドラフト1位」を獲得しています。

〈熊本4支部曼荼羅チャート〉

そこで、ふっと脳裏をよぎったのが、「この曼荼羅チャートを看護連盟の活動に当てはめられないか」ということでした。

まず、支部幹事が集合する支部役員会で提案し、支部幹事たちの同意を得た後に、「熊本4支部曼荼羅チャート」(図2)の作成を開始しました。

図2 熊本県4支部曼荼羅チャート

熊本4支部は2023年度に1260名の会員確保を目標としています。そこで「熊本4支部連盟会員数1260名を目指す!お互いの連携を大切にみんなで一致団結」と曼荼羅チャートの中心部(達成したい目標)に記しました。

その「目標達成に必要な要素」を、看護連盟青年部と支部幹事のいる施設そのもの(あきた病院/済生会熊本病院/桜十字病院/熊本第一病院/御幸病院/熊本中央病院/平成とうや病院)として、施設ごとに目指す会員数を明示しました。

さらに、その「要素を実現するために必要な行動」、つまり、会員獲得のために取り組む具体的活動内容を曼荼羅チャートに記入していきました。この具体的活動内容については支部幹事1人の考えではなく、施設管理者や施設連絡員などから、より多くの意見を吸い上げて決定したものを記してもらうこととしました。

曼荼羅チャートの運用で見えてきたもの

曼荼羅チャートをキックオフしようとしたとき、1人の支部幹事との電話でのやり取りの中で「こうして見える化すると、”やらねばならない”という気持ちになりますね!」という言葉が聞かれました。頭の中での漠然とした考えが一旦文字化されると意識が変わり、意識が変わると行動が変わる、そのような兆しが徐々に見え始めていきました。

〈ミニ研修会開催数の増加〉

中でも一変してきたのは、ミニ研修会の開催件数です。正直なところ、2022年も1200名を超える会員数の割にはミニ研修会の回数は伸び悩みの状況でした。しかし、曼荼羅チャートに「ミニ研修会」の開催を目標として全施設が掲載して取り組みはじめていくと、ミニ研修会の実施件数は7月から上昇を始め、一度9月に下降したものの10月以降再び上昇気流にのってきました(図3、4)。

図3 各施設が行動目標に示す「ミニ研修会」
図4 ミニ研修会開催の回数と参加人数

〈連盟会員数の増加〉

会員数は2023年5月中旬に1106名だったのが、7月中旬に1202名、9月上旬には1220名、そして10月中旬に1228名と徐々に増加しています(図5)。

図5 連盟会員数の推移

〈計画的な研修参加数の把握〉

県主催の研修会への参加数については、どの施設も、研修会の申込書が発生して参加を募るのではなく、年間の研修会を頭に入れた上で、計画的に参加人数を確保する動きが生まれてきたようです。その動きもあって、国政報告会等への参加数にもかなりの手ごたえを実感できました。

〈支部幹事らの意識〉

これらの変化は紛れもなく、支部幹事長や支部幹事たちが要となって曼荼羅チャートの具体的活動を意識し、「その活動を実施するためにはどうすればよいか」という点に真剣に向き合ってくれたこと、また施設ごとに工夫をこらし、曼荼羅チャートをもとにした活動に取り組んでくれている成果だと、支部長である筆者は心から感謝しています。
曼荼羅チャートを活用したことで見えてきた6つのメリットを図6に示します。

図6 曼荼羅チャート活用の6つのメリット

 

曼荼羅チャートをもっとブラッシュアップできるものに

〈曼荼羅チャート活動の約束事〉

曼荼羅チャートを開始するとき、支部幹事の皆さんと1点の約束事をしました。それは、「曼荼羅チャートを活用してのチャレンジが成功するか成功しないか、これはチャレンジしてみなければわからないけれど、自分たちが進めていった軌跡はきちんと残そうね!」 ということです。

そこで上半期・下半期に分けて取り組んだ評価の報告会をすることにしました。なおかつ、その報告はぜひとも各施設の看護部長や施設長に出席を依頼し、施設代表者会議で行いたいと考えました。

2023年10月7日、第1回目の施設代表者会議を開催しました。その中で支部幹事より、各施設の看護部長・看護部長代理の方々に向けて上半期報告が発表されました(図7)。

図7 施設代表者会議で提出された活動計画や中間評価

アウトカムがきちんと報告できた活動内容もあれば、報告に至らず下半期に持ち越す活動内容もありました。支部幹事たちの緊張の瞬間ではありましたが、皆さんが一生懸命に活動してきたことを堂々と語る姿に最後には胸が熱くなりました。

〈看護部長と話し合う貴重な時間〉

この報告の後、各施設に分かれて看護部長と支部幹事とでディスカッションの時間を設けました。
15分間ほどの時間ではありましたが、曼荼羅チャートに記された活動内容を下半期に向けてどのように活用して会員増を目指すのかなど、さまざまな意見が飛び交っていました(表1)。

表1 看護部長と支部幹事のディスカッションでの気づき

日々の忙しさの中で、看護部長と支部幹事が対面で話し合う貴重な時間はなかなか持てないのが現実です。しかし、施設内で支部幹事をはじめ施設連絡員たちが活動しやすい環境を構築するためには、看護部長の理解と協力が必須となります。その意味でも、全体を通して報告会は大変有意義な会議となったと思っています。

そして、何よりもの収穫は、次年度からは上半期・下半期の評価報告のときだけに施設代表者会議を開催するのではなく、「曼荼羅チャート開始のキックオフ日に施設代表者会議を設け、看護部長と支部幹事が同じ認識・同じ温度感で取り組みが始まるように企画しよう」との声が支部幹事たちから上がったことです。

〈曼荼羅チャート活用の課題と期待〉

課題としては、まず、「曼荼羅チャートの周知」があります。今年度からの取り組みであるため、まだまだ支部幹事の施設のみで周知が始まったばかりです。熊本4支部圏域の1つでも多くの他施設に活用が拡大していくためにはどうすればよいか、現在、暗中模索の中ではありますが、まずは施設訪問を増やし、より多くの施設に曼荼羅チャート活用の効果を伝えていく「行動する会員・行動する支部長」であらねばと思っています。

また、これは発想の転換ですが、現在の曼荼羅チャートが定着すれば、会員増だけを目標とするのではなく「政治を動かす現場の声の吸い上げ」を目標においた曼荼羅チャートを考案するのも面白い企画ではないかと考えます。

ポジティブ精神を沸き立たせてくれるものが連盟活動を自分事にしてくれる

3年の支部長経験を経て、筆者が最大にして最高に実感することは、「看護の明るい未来」を創るために1人でも多くの同志である会員を増やす活動は、一朝一夕にいくことはありえずということです。

それは、絶え間ない会員増への努力と、根気と、そして情熱がなくては、なしえないことであると痛感します。だからこそ、そのためにも、自分たちを前向きにさせてくれる存在を、自分たち自身で創っていくことが求められているのではないでしょうか。

2023年度に活動を開始した曼荼羅チャートという1つの手段が、「看護政策実現のために国政に看護職議員を送る」という、看護連盟の目的を達成していく過程に、プラスのアクションをもたらす取り組みになれば大変嬉しく思います。
「継続は力なり」とありますが、今後も支部幹事・施設連絡員・部署連絡員の力を結集し、描いた目標達成に向かって邁進していきたいと考えています。

 

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プロフィール

濵田 みね子  はまだ・みねこ

熊本県看護連盟
熊本4支部 支部長

(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2024 MAR-JUN)

日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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