レポート
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未経験からの産業保健師 オンラインスクール

2022.12.13

坪田 康佑さん( 一般社団法人医療振興会/産業保健師スクール講師 )
樋口 宏太さん( 株式会社Avenirリーダー保健師/産業保健師スクール講師 )
舎川 美咲さん( 株式会社Avenirリーダー産業保健師/産業保健師スクール講師 )

近年、産業保健に注目が集まり、産業保健師に関心を寄せる看護職も少なくありません。企業で産業保健師の募集があっても、ほとんどは「経験者」という条件付き。未経験者はどうやって経験を積めばよいのでしょう?産業保健師に関心はあるけれど未経験の人と、産業保健師を募集している企業の橋渡しをする産業保健師スクールが立ち上がります。

未経験者には狭き門だがニーズはある

坪田:この3人で産業保健師スクールを準備しています。2022年12月7日にプレセミナーも実施します。 今回は、産業保健師スクールが何をやろうとして、どんなところを目指しているのか、お話しができればと思います。まずは自己紹介をお願いいたします。

樋口:私は株式会社Avenirで保健師をしております。これまで、企業の健康管理室や地域、健診センターなどに勤め、保健師としての経験を積み、現在、Avenirに勤めております。 私が産業保健師に関心をもったきっかけは、学校の実習でした。患者さんを見て、こうなる前に何か予防できないのかと、予防の観点から保健師に興味を持ちました。さらに地域の実習では、精神を病んで会社を退職され地域で暮らしている方がいらっしゃいました。そこでも、こうなる前に職場でできることがあったのではと思い、産業保健に興味を持ち始めました。 実は、産業保健師になったあと、勉強不足を感じて一度地域保健に携わりました。でも、そこでは、三次予防に追われておる現場の状況があり、やはり一次予防にアプローチができるのは産業保健師だと思い、産業保健の領域へ戻りました。

舎川:私は大学病院で3年ほど働き、その後1年ほど留学した後、産業保健師を目指すためにAvenirへ入職しました。その後、産業保健師スクールを立ち上げたいと思い、プロジェクトの立案を依頼しておりましたが、時期尚早と言われて5年経ちました。今回スクールを立ち上げることになって、ワクワクしています。自分自身、産業保健師になりたくて20社くらい受けたのですが、経験0は募集しないところばかりで、高き壁でした。社会のニーズはあるにもかかわらず、産業保健師を0から育てるところがないのなら、自分で教育システムに関わりたいと思っていました。 実習に行った時に産業保健師の仕事が楽しかったのですが、特に強くなりたいと思ったのは、海外留学に行ってからです。留学中にさまざまな人種や文化、宗教と触れていくなかで、働く人へのアプローチや教育方法ってすごく大事だな思いました。そこで、病気になる前にアプローチができる産業保健師がいいな、と。

坪田:お二人のお話を聞くまで、自分が産業保健の実習に行ったことを忘れていました(笑)。でも、実習があるのになぜ産業保健の認知度はこんなに低いんでしょうか

樋口:実習では事務的な場面が多いのもあるかもしれません。看護師を目指している学生からすると、医療職というより会社員のようで興味を持ちにくいのかもしれないですね。

坪田:私は看護師免許取得後、一般企業に就職しました。保健師の資格を持っていて第一種衛生管理者の資格も申請して取得していたので、新入社員なのに衛生管理者として登録して、衛生委員会の立ち上げたり残業時間を減らすための見える化をしたり、産業保健師の真似事みたいなことをしていました。また、コーチングの仕事をしていた時代に、コーチングの技術を学びたいいう産業保健師さん向けの勉強会を開催するなど産業保健師さんと交流が多々ありました。舎川さんがおっしゃるように、産業保健師になりたいと思っても、未経験者が応募できる求人がない。企業に話を聞いてみると、採用経験も教育体制もないので、しっかりした経験者が欲しいとおっしゃいます。 そこで、企業と産業保健師になりたい人との橋渡しができるスクールがあるといいなと思い、このプロジェクトに関わらせていただいています。

舎川:一次予防のプロフェッショナルの面もありますが、OLのような働き方ができるのではと産業保健師に関心をもつ人が結構いるのも、事実ではありますが…。

坪田:はい、産業保健師になって社内結婚を目指すんだっていう後輩もいました(笑)。

プレセミナーの告知ページ

つながりを重視し就職にも結びつける

坪田:さてここで、産業保健師スクールの構想をお話ししますと、まずスクールでは絶対に勉強しておかなければいけない事例や、樋口さんや舎川さんが実践してきた知識を学べます。 2点目に、毎月「健康管理室の作り方」「〇〇業界の産業保健」など、実践現場にいる方々の声を聞く「産業保健実践」の構想があります。3点目として、コミュニティーを作ろうとしています。

樋口:私自身もそうでしたが、大体の企業は保健師が一人しかおらず、壁にぶち当たった時に気軽に相談できる相手がいないんです。また、横のつながりの中で他社の事例を知ることは、とても有用です。そういう点で、コミュニティーは本当に大事です。

舎川:エンゲージメントというか、一緒に頑張ろうっていう思いがあると、よりよいものが生まれますよね。

坪田:もうひとつ、このスクールの特徴の4点目は、就職に直結していることです。スクール修了後、面談に進む設計になっています。学んだのはいいけれど、それを生かす場がないという教育プログラムは結構あると思うのですが、この産業保健師スクールでは学んだものを生かす場所も同時に作り上げていきます。スクールでの成績が、就職に影響を与えるので、真剣さが求められます。

病棟勤務でも受講しやすく

いつスタートしますか?

坪田:12月7日にプレセミナーとして1コマ「健康管理室の作り方」からスタートし、1月に本格的に始まります。2年以内に1000名は受講していただきたいと考えています。 今回のコロナ禍でわかったのは、看護職不足ではなくて、看護職が働きたい環境不足だということです。納得のいく収入であれば、しっかり集まってくるとわかったので、産業保健師スクールを通して、その仕組みを作り上げていきたいです。

具体的にはどんなプログラムになりますか?

坪田:修了まで、12単位・12時間の授業を受けてもらいます。「産業保健師入門」「ハラスメントのメンタルヘルス」「産業保健師概論」などを11単位分。これは、アーカイブしてあるので6か月間視聴可能です。他に毎月1回、産業保健師実践を提供していこうと思っています。産業保健師実践は、病棟の看護師と産業保健師の両方が入りやすく、病棟業務が忙しくない、水・木曜日の夜でスケジュールを調整しているところです。 私の夢は、病院に産業保健師を入れることなんです。産業界での産業保健師が当たり前になってきたら、病院の産業保健師も当たり前になってくると思います。病院って、産業医はいても産業保健師はほとんどいないんです、看護師があんなにいっぱいいるのに。産業保健師が病院の中に一人でもいると、メンタル発症率が高い職業と言われる看護職の状況が改善されていくんじゃないのかなと思っています。

樋口:働き手が少なくなっている今、従業員一人ひとりを大切にした健康的な職場作りは、今まで以上に大事になっています。一方で産業医や産業保健師の重要性はまだ十分認知されていないのかなと思います。

産業保健師に法的位置付けを

坪田:産業衛生学会看護部会も産業保健師会も言っていることですが、産業保健師がまだ法的に位置付けられていないことが大きいと思います。また、産業医がいてもあまり機能していない場合があります。 コロナで保健師という職業が注目を浴びました。それをきっかけに、産業衛生学会や産業保健協会とも協力して産業分野にも保健師がいることを周知できればと思っています。

舎川:産業保健師は、実際に自分でプランを立案して、社員の皆様や会社自体がどう変化していくのかを数字で見ることができます。自分の関わりによって、生産性が向上していくのって、すごく面白い。人事部や役員の方にプレゼンできるケースもありますし、こんな経験ができる仕事って医療系ではなかなかないのではないでしょうか。

オンラインでも活躍できる場がある

坪田:忘れてはいけないのが、産業保健師の業界団体には、一般社団法人日本産業保健師会と公益社団法人日本産業衛生学会 産業看護部会があります。そこに教育プログラムもあります。ただそのプログラムは、産業保健師になられた方が、より成長するための、つまり1を10にするためのもので、0から1の就職と教育プログラムが一体化したものではありません。だからこそ、私たちは0から1を育てる部分をやっていきたいと思っています。

中小企業へのアプローチはどのように考えていらっしゃいますか?

坪田:近年では企業に健康経営の視点が取り入れられていますが、コロナもあり、小さな事業所も興味関心を持ってくださっています。また、産業保健を導入するための補助金・助成金も増えています。 同時に、2022年にパワハラ防止法が制定されるなど、事業所が管理しなければいけないヘルスケア関連の項目が増えてきています。これを人事部ではなく、産業保健師を採用してやることで、経営効率を上げていくことも考えられるでしょう。

舎川:別の視点で言いますと、今までは訪問するのがメジャーでしたが、最近はクラウドを用いて、オンラインで気軽に相談することもできます。そうしたニーズはさらに高まってくるのかなと思っています。

坪田:潜在ニーズは高まっているので、これを顕在化していくことが、これからの私たちの仕事ですね。

 

スクールの詳細はこちらを  →   産業保健師スクール (avenir-executive.co.jp)

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日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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