2022.05.26
五十嵐 明順さん(株式会社アイジーエー 代表取締役社長)
アイジーエーはaxes femme(アクシーズファム)というオリジナルのファッションブランドを、特徴のあるデザインの店舗で展開して、ファンを獲得しています。他がやらないことをどんどんやっていこうという五十嵐社長にお話を伺いました。
生地の卸問屋からファッションの小売業へ
私の祖父が1941年に福井県で創業してから81年目となる会社です。東京本社もありますが、今も登記上の本社は福井県で、物流センターと経理と人事などの拠点となっています。
私も含めた営業部隊はほぼ東京におりまして、全国の店舗やオンラインショップの統括をしています。
創業当初は五十嵐羅紗店という卸問屋として、生地を買って地元の洋品店に卸しておりました。繊維という点は変わりませんが、2代目が紳士服から婦人服、ジーンズ、カジュアルまで、すべてのアイテムを扱うようになり、 20年前に小売業に転換しました。それに合わせ、五十嵐株式会社という社名を、株式会社IGA(アイ・ジー・エー)=InterestingGlobal Activityとしました。よく見ると、いがらしのイガとも読めるんですよ(笑)。
フェミニンなテイストに特化した個性的なレディース・ファッション
2000年以降に、日本各地に郊外型の大型ショッピングセンターができるようになりました。そこに向けて業態開発をして、出店することにしました。まだまだ無名だったので、多い時には年間で20店舗出店し、一気に全国展開をしていったのです。
その時に立ち上げたレディースファッションブランドが、axesfemme(アクシーズファム)です。どうしてもレディースブランドは、同じようなものになりがちです。一番を取るには、圧倒的な価格戦略やお店の面積が必要になってきます。我々は、そうではなく、差別化戦略をとりました。特徴のあるフェミニンに特化し、店舗内装も商品テイストも個性的な方向としました。
われわれのブランドの特徴は「かわいい」の中に、ノスタルジックとエレガントな要素とキュートな要素とを押さえている感じです。お客さまは、20代の女性が多いのですが、よく買われる方は、40、50代の方も多いですし。年齢・国籍・性別・体型など関係なく、すべての人にファッションを楽しんでいただくことを目指しています。
100%オリジナル商品で、社内にデザイナーのような商品企画メンバーを抱えています。メンバーは20代から30代の女性スタッフで、アクシーズファムの店舗経験を経て、ブランドらしさを大事にして商品作りをしています。デザインの勉強したことがないメンバーもいます。
商品の生産は今のところすべて中国のパートナーにお願いしています。先ほど申し上げましたように、物流センターは福井にあります。
パワフルな女性たちが自発的に活躍する会社
我々の店舗は、イオンモールやららぽーとなど、郊外型のショッピングセンターへの出店が多いのですが、この頃は、池袋のサンシャイン・シティなど都市型のショッピングセンターや駅ビルへの出店もあります。 都市型といえば、日本看護連盟さんがある原宿のラフォーレにもお店を出しています。
商品デザインと同じように、店舗デザインもかなりこだわっています。間口を狭くしたり、シャンデリアをつけたり、色目を暗くしてグリーンを入れたり・・・・と。イオンモールでこんな店ではあり得ない、と怒られたこともあります(笑)。 まずは、お客さまに入ってもらい、楽しんでもらえればいいな、とやっています。
でも、それだけこだわっていると、スタッフもアクシーズファムがもっと好きになって、お客さんとの会話も楽しくなってきます。販売職は大変というイメージがあるかもしれませんが、当社の場合は、いろいろ楽しみながら仕事しているスタッフが多いんじゃないかなと思います。
このような展開の結果、我々のブランドが好きで会社が好きという、自発的でパワフルな店長が増えていきました。現在、アルバイトを含めて600名ほどのスタッフがいますが、その97%が女性です。課長も80%以上、部長以上だと50%ですが、リーダー職も含めて、女性が元気に活躍している会社です。
地域に根ざした店づくり、ファンづくりに力を入れていく
今は全国に80店舗ほどあります。今後は、たくさん出店するというよりも、リモデルをしながら一つひとつ地域に根ざしたお店にしていきたいと考えています。また、ECショップ(オンライン・ショップ)が、売り上げ全体の35%を占めるようになりました。これからますます伸びていくことが期待されます。
同時に、ファンづくりにも力を入れています。VIPなお客さんづくりを意識していまして、ファンコミュニティーを大事にしています。我々のブランドは、商品平均単価は3500~4000円、客単価は7000円くらいで、それほど高価なものではありませんが、年間30万円以上お買い上げになるゴールドメンバーや、100万円以上お買い上げになるプラチナメンバーの方もいます。そうしたお客さまのランクに合わせて、ファンミーティングなどを毎月行い、商品の意見交換をしていただいたり、ファン・サービスの強化をしているところです。
コロナ禍になり、我々も全店休業になってすごく苦しかった時期がありました。それだからこそ、ECショップの強化やファンとのつながりを大事にすることに、今改めて取り組んでおります。
ただ商品を売るだけではなくて、お客さまがその商品を着ていく時間や場所の提供も徹底してやろう、と。
アクシーズファムは20周年を迎えます。その周年記念に、全国でさまざまなファンイベントを展開します。
かわいいラッピングをした移動販売車を作って、全国各地に出向いて行きます。
また、全国で、ランウエイを設け、歩くレッスンをしたり、ポージングの練習もしたりして、ファンが参加するファッションショーを開催します。子どもをメイン対象にしたイベントですが、そこでファッションの楽しさを知ってもらいたいと思っています。
実は、この頃は、大人の方の参加も増えています。おしゃれな服を着ていく機会が少ないなど、ファッションの楽しさを忘れがちな昨今なので、大人にとっても大事なんだと改めて思いました。
これからも、他がやらないことをどんどんやっていこうと思っています。
町おこし事業やSDGsへの取り組み
2年ほど前に、a. departmentstore(エードットデパートメントストア)というECショップを立ち上げ、伝統工芸品やハンドメイド福井のモノづくりをしている、福井県の50社ほどの企業に参画してもらってます。私と同じように2代目3代目の社長世代が、この先どうしようか、何かできないかと話しあっていたのがきっかけです。我々が培ってきたECショップのノウハウだとか、商品開発やマーケティングのノウハウをお伝えしています。
ただ、3年目を迎え、難しさも感じているところです。モノだけだったのが食品を追加したりしましたが、ビジネスとして成り立たなくてはいけません。リブランディングし、もう少し女性を意識したプロダクト作りやサイト作りを考えているところです。
また、3年前には廃棄0プロジェクトを宣言しました。大量生産・大量消費をするのではなく、MD(マーチャンダイジング=商品の販売計画)の精度を上げ、消化率を上げて無駄をなくそうしています。端材を使ってアクセサリーを作ったり、地元の障がい者支援センターに縫製してもらったりもしています。布やレースを貼り付けるカルトナージュというフランスの手芸があるのですが、そのワークショップを開催したりして、洋服を楽しむいろいろな手法を模索しています。
そうこうしていくうちに、お客さまから、まだ着れるお洋服がたくさんクローゼットにあるけれど捨てたくはない、という声をいただき、axes femme vintage shopという古着ショップをオープンさせ、そこで販売するようにもなりました。アクシーズファムはもともとビンテージ感のある服なので、なかなかいい感触です。今後はECショップなどを展開し、さらに発展させていきたいと思っています。
SDGsと言われ始めた当初は〝やらなあかんな〟くらいに思っていただけでしたが、今は本気で大事だなと感じています。お客さんも共感してくれているので、真摯にやれるところから取り組みたいと思います。
ファッションという軸で看護職を支援したい
実は、私の妻は、子育てで専業主婦になる以前は、東京の病院で看護師をしておりました。また、アクシーズファムのVIPなお客さんには、看護師さんが多くいます。ふだんたいへんなお仕事をされているから、プライベートでは思いっきりファッションを楽しみたいという方が多いのかな、と思っています。
そのようなご縁もあって、日本看護連盟さんの、看護職が今置かれている環境をよくするという使命にとても共感しています。そこで、われわれのファッションという軸で、なにかご支援できないかと考えているところです。
(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2022 JUN-AUG)
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