2022.05.25
松本謙一さん(サクラグローバルホールディング株式会社 代表取締役会長)
サクラグローバルホールディングのグループ企業
サクラグローバルホールディング(SGHC)傘下のサクラグループは、日本、ヨーロッパ、アメリカの3拠点を中心に、最先端医療技術からヘルスケアまでの幅広いビジネスを展開し、その活動の範囲をアジアなどの新興国にも広げています。また、SGHCは、医療機器産業における産官学のコラボレーションを行なったり、サクラグループ各社が機能的かつ効率的な経営をするための体制作りをしています。
グループの中核企業であるサクラ精機は、洗浄滅菌機器の製造販売と病理検査機器の製造を担っています。多品種少量生産を前提とした生産システムをとり、幅広いニーズに応えております。また、教育専門施設を備え、洗浄滅菌に関する研修や学術セミナーなども行っており、感染防止に関する最新情報を提供しています。東京本社には「サクラとぴあ」と呼ぶ施設を開設し、3DCGを駆使した設計シミュレーションによる理想的な洗浄・滅菌による感染対策を体験することができます。一方、サクラファインテックグループ(サクラファインテックジャパン、サクラファインテックUSA、サクラファインテックヨーロッパ)は、病理診断分野に対する標本作製機器・器材、試薬、関連商品の開発、製造、販売を担っています。サクラファインテックグループでは現在、ロボット技術などを駆使して病理診断に必要となる標本作製の全自動化を目指しています。迅速かつ効率的に高品質な結果を提供するため、スマートオートメーションというコンセプトで製品開発を進めています。
そのほか、サクラエンジニアリング、サクラヘルスケアサポート、サクラエスアイ、サクラシステムソリューションなどの会社があります。
ニッチ分野をグローバルに展開していく
グローバル・ニッチを基本姿勢としています。要は、感染制御とがん診断という二つの分野に絞って、そこをグローバルに展開しています。ニッチといえども、時代が進んでどんどん枝葉に分かれていくと、非常に広範囲で深みが出てくる分野です。
現在、世界に3000名ほどの従業員がいます。ヨーロッパで16か国、アメリカ、中国に会社があります。中国では「中国製造2025」という国家政策が習近平国家主席から打ち出され、中国メーカーが非常に増えています。従来のように、中国からは輸入するだけ、日本から輸出するだけでは中国メーカーに勝てません。
中国政府は江蘇省泰州市を医療関連産業の経済特区とし、2006年にCMC(チャイナメディカルシティ)を開設しましたが、そのCMCに日本企業として初めて参入したのが、サクラグループの櫻花医療科技(泰州)有限公司です。メンテナンスや消耗品の生産は自社で行い、中国内のサービス機能を充実させています。北京と広州に支社を設け、中国における販売体制は広がりつつあります。2015年には、北京にサクラ北京研修センターを開設し、さらに2022年に本社所在地の泰州に製造拠点を設け、中国のビジネス拡大を目指しています。
また昨年は、長崎市にサクラ精機の長崎研究開発センターを開設することが決まりました。
心のあそび=余裕がいろいろなことにつながっていく
当社の創業は慶長3(1603)年で、江戸幕府の開府とともにあります。私で17代目ですが、元々は薬商から始まり、時代に沿って医療機器産業界を生き抜いてきました。
昨今では大会社でも、分割されたり、非上場となったり大変厳しい状況です。先を読みながら、堅実にいくことが大事にされています。ですが、私はそのような選択と集中だけではなく、リスクヘッジしながらでも伸びていくことを考えています。
例えば、キューバで医療機器生産を始め、医療人材育成基金も設立しました。これは、40年以上前、キューバのハバナで行われた展示会で、故フィデル・カストロ議長に出会って彼の姿勢に感銘を受けたのがきっかけです。 どうしてそんなにキューバに入れ込んでいるのか、とよく聞かれまして「キューバ(急場)しのぎだ」なんて冗談を言っています。これまで様々な国を訪問してきましたが、キューバは思い入れのある国の一つです。
常々私が申し上げているのは、心の余裕や遊び心がいろいろなことにつながっていく、ということです。
余談ですが、人を巻き込んで、何でも楽しくやろう、というのが私の生き方です。大学卒業後は、外交官、小説家や落語家になりたかったくらいです。健康医療産業での仕事を通じてそれらは実現できていますから、この業界に身を委ねていることは後悔していませんけれども。
それぞれの国で責任をもって役割を担ってもらう
医療は進化のとても速い分野ですし、世界各地の事情に対応しなければなりませんので、各国で人材を育て、任せるところは任せるようにしています。例えば、ヨーロッパでは、オランダにヨーロッパ統括本社がありますが、昔はその統括本社の下にヨーロッパ各国の15の営業所と支店を置いていましたが、数年前から国ごとに分社化して、その国の人に社長をやってもらうように変えました。実はオランダは法人税が安いので、オランダに会社をまとめたほうが得なのですが、それでも、それぞれの国の会社で責任をもってもらう。給料も自分たちの会社で稼ぐ。責任と権利をしっかりさせることは、人間としても大事なことだと思っています。
他にないものを常に開発し、製品の価値を常に高めていく
グローバル展開しますと、当然ながら競合が激しくなります。しかし、価格勝負の競争ばかりやっていると、いつも汲々としなければいけません。価格だけではない価値のものをさらに開発していくことが大切です。これから開設される長崎市の研究開発センターも、製造もしますが、開発を中心にして、無用な価格競争はしなくてもいいようにしたいと思っています。
今後はアフリカへの進出など、さらなるグローバライズをしてきたいと思っています。今すぐではありませんが、たとえば、長崎大学熱帯医学研究所と協力することも考えられます。もうひとつ、人に寄り添うことを忘れないようにしたいですね。AI、IT化によってコスト削減が実現しても、人の心がなければなりません。SF作家のアシモフは「ロボット三原則」で、人間へ危害を加えてはいけない、人間の命令に従う、自分を壊さない、と掲げました。機械も人に寄り添うことが求められます。たとえば、昔は1週間かかったがん診断が、今は1日できるようになりました。これも寄り添い、努力した結果です。こうして寄り添うことが数字につながることを心に留め、一つひとつを大切にしたいということです。
規模を追うのではなく、内容を追いたいのです。小さな企業で大きな未来を考えたい。それには先程から申し上げているように、常にユーモアの心を持つこと、心の余裕を大切にしていきたいと思っています。
一番美味しいは、料理そのものがうまい、ワインがうまいのではなくて、パートナーと一緒に楽しく食べる料理なのです。それと同じで、会社が成果をあげるには、会社の皆の協力がないとできません。
看護職のみなさんも心の余裕をもっていただきたい
私どもも、仕事柄、看護職の皆さんと接する機会もたくさんあります。コロナ禍がつづき、看護職の方々は大変な時期を過ごされていると思います。法改正などで看護職のできること、やることも変わっていき、活躍の場が広がる一方、ご苦労も多いのではないでしょうか。そんななかでも、平静な心を保つこと、心の余裕を持つことを心がけていただき、お身体に気をつけてお仕事に向き合っていただきたいと思います。
(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2022 JUN-AUG)
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