2020.04.24
佐伯市は、大分県の南東端に位置する大分県で最大の面積となる中核都市の一つ。
人口は約7万人、高齢化率は40%に届こうとしています。
佐伯市内にある19床の有床診療所である塩月内科小児科医院では、
看護職のキャリアアップを図るために当初は、週1回の院内研修を行っていました。
この取り組みを市内の診療所にも広げたいと、
2013年から診療所看看連携の活動を起ち上げ成果をあげています。
北谷玲子統括部長は、塩月内科小児科医院(塩月医院)に着任した時、
それまで勤めていた地域の中核病院とは違って、診療所が地域に根ざした患者・家族への関わりを行っており、
病院勤務では経験できないような看護活動を目の当たりにします。塩月医院の看護のレベルをさらに高め、
スタッフのキャリアアップのため、北谷部長は院内の教育システムを整えました。
准看護師の90%が進学し全体の看護レベルも向上しました。
一方、佐伯市内の多くの診療所では、看護師数は2~3人で、教育体制も整っていないのではと考え、
北谷部長は、塩月医院のような教育活動を市内の診療所に広げたい、という思いが強くなってきました。
2013年、院長から了承を得て診療所看看連携の勉強会を起ち上げ、塩月医院の看護スタッフが事務局を務めることにしました。
資料作成費や連絡費は、塩月医院の院長・副院長がサポートしました。勉強会の参加者からは、運営費として、300円貰っています。
「何もないところからのスタートでしたから、私たちは何をしたいのか目的や活動内容をしっかり掲げ、
その内容をもとに、看看連携の案内状を作成し、46ある診療所に送りました」と北谷さん。
活動を始めて6年目に入り、平均で30~50人が参加しています。様々なテーマの勉強会というだけでなく、
普段顔を会わすことの少ない診療所看護師同士の情報交換の場としても活用されています。
お互いの顔を知って声をかけやすくなりました。
また、准看護師の進学支援としても、仕事との両立や学校案内等の情報提供を行っています。
看看連携を起ち上げて最初の半年間は参加していない施設にも、
話し合った内容をまとめファックスで送っていました。
2年目からは、看看連携の活動を知った開業医たちが講師を買ってでるようになりました。
そこから、新たな講師が紹介される、というようにネットワークも広がっていきました。
大分県看護協会の地区活動費としてコピー用紙等の支給が出るようになりました。
診療所看看連携を立ち上げほどなくして地域包括ケアが叫ばれるようになりました。
北谷さんたちは、診療所は地域包括ケアの拠点だと考えるようになりました。
地域医療の窓口となるのが、かかりつけ医である診療所ですし病院へとつなぐ役割もあれば、
患者さんが退院後、訪問診療や介護サービス(介護支援専門員)等の連携も担います。
このように診療所の役割は多様化してきていきます。
「地域包括ケアの中で診療所看護の役割を見直し、声を上げていこうと話し合っています」と北谷さん。
また、診療所だけでなく、保育所との連携も始まりました。
塩月医院は、小児科でもあるので佐伯市の2つの小児科との共同で保育士における困りごとの情報を得て、
園児の健康相談を受けたり、お昼寝の時間に感染症対策の出前講座を行ったりしています。
これまでなかった保育園からの問い合わせも増えてきました。火災対策で、佐伯消防本部の方を講師に招いたこともあります。
塩月医院の看護師は、フルタイム12人、パートタイム3人のほかに、プラチナナースが3人います。
准看護師3人が同時に進学した時があり、その時にプラチナナース制度を導入しました。
看護学生が学校に行ったり日勤看護師が病欠した時、プラチナナースが活躍します。
最年長は76歳。みなさん管理職だった方なので、医療安全や感染対策を理解されており頼りになる存在です。多い月には、12~15日出勤されるそうです。
このような仕組みを使えば、地域の准看護師も進学しやすくなるのでは、と北谷さん。
毎年、診療所看看連携活動の年度末の最終評価において次年度も、
是非続けて欲しいという声が圧倒的です。
「診療所の看護師もみんな勉強したいんです。ただ、人手がないのでなかなか研修に出られない。
人手がなくて、運営のお手伝いができなくて申し訳ないという声もあります」と、看護師長の岩田千代美さん。
立ち上がりから診療所看看連携を見守ってきた塩月一英院長は「アクティブに活動するほど看護のレベルも上がっていきますから診療にもプラスになります。
もちろん、患者さんにとってもよりよい看護を提供できて、いいことだと思います。
実際、この5年間で看護ケアがレベルアップしてきており、とても助かっています。
サポートしてきたよかったと実感しています」と話されました。
塩月医院では、入院設備のないクリニックの術後の患者さんの入院を受け入れ、
そこの診療所の医師が治療に通われ、当院の看護師がケアをするというケースもあるそうです。
北谷さんは「これからは、他の診療所と事例や課題などの情報共有をはかって場合によってはお互いに支援したり、
グループで対応できるように連携を深めていけたらいいなと思っています」と話します。
(記事:千葉明彦)
(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2019年春夏号)
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