2021.09.22
酒井 裕子 さかい・ゆうこ( 社会医療法人 製鉄記念八幡病院 / 福岡県看護連盟青年部 )
政治を身近に感じたエピソードを話すようにと言われたら、以前の私だったら、きっと「特にないです」と答えたでしょう。今なら、看護連盟青年部との出会いについて話せます。私は2017年から青年部の活動に参加させていただいているのですが、今回は私が青年部に参加してからの気持ちの変化を交えながら、看護と政治のつながりについて、個人的に感じていることをお話ししようと思います。
青年部との出会い
2017年、私の所属する病棟の師長から、看護連盟の青年部へ推薦していただきました。私はその場で引き受けることにしたものの「連盟の青年部って何するんだろう?」と心の中で呟いていました。
お恥ずかしい限りですが、当時の私は政治に興味関心がなく、それまで数えるほどしか投票にも行っていませんでした。「私の一票で世の中変わるわけない」という考えの持ち主でした。また、入職時から看護協会と看護連盟に入会してはいましたが、その活動内容や役割については、よく理解していませんでした。
そんな私ですが、初めて青年部会議に出席した日のことは今でもはっきり覚えています。自分と同世代の看護師が、熱心に政治活動に関する意見交換をしていたのに驚きました。私の周りにはそんな人たちはいませんでしたし、そういう機会もなかったので、自分が知らない世界に踏み込んだような新鮮な感覚でした。
国会議員が築いてきたものの上に私たちがいる
基礎研修を通して看護連盟設立の歴史を学びました。私が看護と政治のつながりを意識したのはこの時です。今ある看護師の専門性の確立や社会的地位は、過去に多くの看護職国会議員が築き上げてきたものであり、自分はその恩恵を受けている一人なのだと自覚したからです。
また、青年部の活動を通して議員の方々との交流の機会もありました。市議会・県議会見学などで、議員の方々の仕事について知ることができ、政治・政策に対する考え方が少しずつ変わっていきました。診療報酬の改定があれば注目もするようになり、社会人としても、看護師としても成長できたと感じています。
関係ないようで関係ある、看護と政治
皆さんは仕事をする中で「もっとこうなってほしい、こうなるべきだ」と思うことはありませんか?その問題や課題は個人レベルのものですか?職場レベルのものですか?それとも、法律を変えなければならないようなレベルのものでしょうか?前の二つは自分の努力次第で変えることができますが、三つ目はどうでしょう?自分の力だけで変えることができるでしょうか。どの職業も同じですが、自分の職場の労働条件の改善や職業の地位向上を望むことは、自然なことだと思います。なぜなら、それらは私たちの生活に関わってくるからです。
若い看護師の方々は知っているでしょうか。今では考えられませんが、昔、一人夜勤や月8日以上の夜勤勤務、夜勤手当100円という時代がありました。その時、看護師の給与増額の働きかけをしたのは、看護職国会議員です。もし、看護職国会議員がいなかったら、今の私たちの労働環境は違っていたでしょう。実際、看護職国会議員が落選した年に厚生労働省の看護課が廃止されたこともあったのです。
感じている問題を愚痴で終わらせてはもったいない
日本は民主主義国家で、国民が主権を持ち、自分たちの選んだ代表が政治を動かしています。つまり、私たちの代表である議員を選ぶ選挙がとても重要なのです。以前の私は、それを放棄したこともありました。それなのに、不満だけは言っていました。
2019年のある調査では「自分で国や社会を変えられると思う」と回答した18歳はわずか18.3%だったそうです。選挙の投票率は年齢層が下がるほど低下しており、結果として若い世代の意見が政策に反映されません。選挙に参加することで、自分の主張を間接的にではありますが、政策へ反映させることができます。私たちが感じている問題をただの愚痴で終わらせるのは、もったいないと思うのです。幸いにも今私たちには、国政に4人の看護職議員がいるのですから。
青年部としてのこれから
2020年より、新型コロナウイルス感染症流行によるニューノーマル時代の到来に戸惑い、疲弊しながらも、私たち青年部は、看護師が抱えた問題の情報共有や、看護師への支援対策を学び、最前線で闘う看護師の声を国会議員に届けてきました。看護連盟が看護協会と協力して物資の確保や支援金の要望など、様々な活動をしてきたこと、今なお看護職国会議員が現場の看護師のためにご尽力されていることを多くの看護師に知っていただきたいと思います。
この度の感染症の対策を巡って各国や各地域のリーダーシップが注目され、政治を身近に感じた方も多いのではないでしょうか。とはいえ、看護連盟の活動内容を知らない看護師は多く、会費を払う意義がないと退会していく人も多くいます。私が自県の青年部委員長になってから目標としていることは、若い看護師の方々が自ら社会のことを考え、判断し、主体的に行動することができるような活動をすることです。
人々の健康を守る上で、自らが社会参画することは大変重要です。このことが伝えられるよう、これからも青年部のメンバーと協力して活動していきたいと思っています。
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