レポート
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「現場の声は伝わる」と実感した瞬間

2021.06.15

中村 真梨子 なかむら・まりこ ( 同心会 古賀総合病院 / 宮崎県看護連盟青年部 )

私は、宮崎県の古賀総合病院で悪性腫瘍病棟に所属しています。主に消化器系の急性期・終末期の患者さんが入院しているフロアです。

患者さんの思いをゆっくり聞きたいと思っても…

私たちの仕事は、医師の診療の補助、病気や障害を持つ患者さんの療養上のお世話ですが、事務作業やそれ以外の仕事もたくさんあり、いわゆる 「何でも屋さん」です。業務に忙殺され、時間をかけたいと思っているところに時間をかける余裕もなく、勤務中はトイレに行くことさえ忘れて しまっています。同じように感じている看護師も多いのではないでしょうか。

患者さんの思いをもっと聞きたい、患者さんの家族と関わりたい、ケアに時間をかけたい、たまには病気や障害と関係ない話で盛り上がりたい、 そう思っても現実にはそうはいきません。担当患者さんの部屋に滞在できるのは長くても15分程度、検温をして全身の観察をしていると、 すぐにナースコールが鳴ったり、入院対応や検査出しの対応、新人教育などのために退出しなければなりません。 次に部屋に行くのは昼食の時となり、ゆっくり話を聞く時間はありません。

看護必要度を記録する時間で患者さんに関わる時間が…

私たちの業務の中でも時間を要するのは看護記録です。患者さんの状態を把握し共有するため、看護記録が欠かせないのはもちろんですが、 少しでも時間を短縮できないか病棟スタッフで何度も協議し、今では簡潔で見やすい看護記録になりました。しかし、それでも省略できなかったのが、 看護必要度の記録です。2008年度から、患者の重症度と活動行為及び患者に提供されるべき看護の必要量を測る指標が導入され、毎日看護必要度を記録し、 その根拠となる記録を残すことが義務付けられていました。この看護必要度の記録に時間を要し、患者さんに関わる時間が少なくなると感じていました。

現場の声を伝えたら、現場が変わった!

私は看護連盟青年部に所属したことで、このような現場の思いや問題点を伝える機会を得ることができました。当院に石田まさひろ参議院議員が視察に 来られることになり、現場の声を伝えることになったのです。普段から思っていることを伝えてみようと思い、看護必要度の記録に時間を要していることを 伝えました。石田議員は電子カルテを見て「毎日こんなに記録を書いて大変だね。これは、何とかしないとね。もっと、簡単にチェックで済ませたいね」と おっしゃってくださり、「ぜひともお願いします」と申し上げました。

数か月後、診療報酬の改定が行われ、看護必要度に対する根拠の記録は不要となり、該当項目にチェックを入れる方法へと変更、看護計画の中のプランを 細かく充実させることになりました。これまで記録に要していた時間で、もっと患者さんと関われると嬉しく思いました。もちろん、この意見だけで変わったとは 思いませんが「こうやって現場の声は伝えられる、伝わる」と実感した瞬間でした。

石田まさひろ参議院議員、病院視察

小さな声かもしれないけど、伝えなければ変わらない

このように、私たちの働く環境や看護を変えたい、もっと患者さんに寄り添いたいと思っている看護師は多いはずです。いきなり「政治」と聞くと、遠い存在、 近寄りがたい、自分には関係ないと感じてしまう人も多いでしょう。

しかし、小さな声かもしれませんが、伝えなければ伝わりません。看護現場の環境を変えたいと思ってくれる仲間がいることを、みなさんにも感じてほしいと 思います。世界中が新型コロナウイルス感染症でたいへんな思いをしていますが、政治の力、看護の力を信じ、乗り越えた未来を夢見て、これからも頑張りましょう。

日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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