レポート
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病院がプラネタリウム⁈ 星空工房アルリシャ

2020.12.09

高橋真理子さん(宙先(そらさき)案内人)

レポート

星空と出会う機会の少ない長期入院・難病の子どもたち、星空を見上げる暇もなく忙しい日々を送る看護師のみなさんに届けたい!

取材・構成 今村 美都(医療福祉ライター)

宙先(そらさき)案内人こと、高橋真理子さんは山梨県立科学館の名物学芸員でした。天文担当として、プラネタリウムの番組制作やワークショップなど、 プラネタリウムの枠を超えたユニークな取り組みで、注目を集めていました。平原綾香さんが歌い手をつとめ、全国で知られるようになった『星つむぎの歌』 プロジェクトを仕掛かけたのも、実は高橋さん。  
そんな高橋さんが独立し、2013 年4 月に「星空工房アルリシャ」を立ち上げました。『病院がプラネタリウム』は、星空工房アルリシャの活動の大きな柱の一つです。

『病院がプラネタリウム』って?

病気や障がい、生活環境などによりホンモノの星空を見られない人たちにこそ、星空と宇宙を届けたいという思いから始まった『病院がプラネタリウム』。 たとえば、重症心身障がいのある子どもたちの中には、NICUからそのまま入院し、自宅で過ごしたことがないために、一度も星空を見たことがない子どもたちもいます。 そこで、長期入院をしている子どもたち・難病の子どもたちへプラネタリウムを届けることに、高橋さんはとりわけ力を入れてきました。

『病院がプラネタリウム』では、主にドーム型の移動式プラネタリウムが使われます。空気を送り込めば、あっという間にドームが完成。大抵はボランティアスタッフの サポートがありますが、いざという時には高橋さん一人でも組み立てられます。全国各地の病院にプラネタリウムの贈り物ができるようになったのも、 この移動式プラネタリウムとの出合いがあったから。車椅子やストレッチャーごと中に入れるので、寝たきりの方や身体に障がいのある方でも楽しむことができます。

日常の中で星空に触れることのない子どもたち、そしてもちろん大人になった人たちにも、星を通じて「人は星から生まれて星へと帰っていく存在である」ということを 感じてもらえたら̶̶。宇宙、ひいては、いのちへの思いがぎゅっとつまったアルリシャの「プラネタリウム」は、いわゆるプラネタリウムへのイメージをガラリと 変えてくれるかもしれません。

山梨大学附属病院院内学級の子どもたちから寄せられた感想

学術集会や看護師向けの研修でもプラネタリウム♪

昨年の第57回日本小児血液・がん学会学術集会と第13回日本小児がん看護学会学術集会の合同開催に招待された『病院がプラネタリウム』。ポスター会場でのプラネタリウム上演では、 10分バージョンで200名を超える医師・看護師が鑑賞。「自分の病院に来てほしい」と申し出る医師や看護師の方々も現れました。

『病院がプラネタリウム』は、患者さんだけでなく、患者さんのご家族や医療職の方々にも見てほしいと、高橋さんは願っています。実際「自分自身を見つめ直す」研修の一環として、 病院に招かれたこともあるそうです。スクリーンを使ってプラネタリウムを上映し、星を見上げることの意味を問います。つづいて、参加した看護師の方々に星形の付箋に未来へ向けての 希望の言葉を書いてもらいます。貼り出されたたくさんの星たちの下に、街を投影することで、「みんなの願いは空にある」というメッセージにつなげました。

修を受けた看護師の方々からは「宇宙は広く尊いものだと感じ、頑張ろうと思えた」「忙しい業務に追われ心にゆとりがなくなっていましたが、リフレッシュできた」 「病を抱えた多くの患者さんに見せてあげたいと思った」「自分がちっぽけな存在だと思い、今の悩みがどうでもよくなった」といった感想が異口同音に聞かれました。

こうした研修を重ねるなかで「日々大変な仕事をしている看護師さんを始め、ケアをしている人たちにこそ、自己肯定感を高めて、自分を大切にしてほしい」という思いが強まり 『病院がプラネタリウム』の枠にとどまらない、看護師・介護職などケアする人へ向けたプロジェクトも水面下で進行中だそうです。日々目まぐるしく、患者さんと向き合う看護師のみなさんにこそ、 時には星空を見上げて、自分を大切にしてもらえたらと、高橋さんは心からのエールを送ります。

プラネタリウム・ドームの外観
「ありがとう」の気持ちを込めて贈られた、いろいろな感想

あなたの病院にも星空を!『病院がプラネタリウム』を実現するには

Q  病院がプラネタリウムに費用はかかるの?

A : クラウドファンディングを行い、短期間で目標金額を達成できたことから、今年度は無償で長期入院・難病の子どもたちへ『病院がプラネタリウム』を届けることが可能になりました。

また、企業からのサポートにより、重症心身障がい者病棟やホスピスなど、子どもたちだけでなく、大人向けにも無償での開催が可能となりました。 子ども・大人、病院・施設を問わず、まずはお気軽にご相談を!  
一方、活動を継続していくためには、資金も重要であることは言わずもがな。定期開催を希望する病院・施設も出てくる中で、活動継続のためにも資金調達・費用負担は今後の 課題でもあります。

Q  病院がプラネタリウムを開催するための条件は?

A : 移動式プラネタリウムのドームを広げるには、5m四方、天井まで2・7mの高さが必要となりますが、少し高さが足りなくても、エアドームなので実施可能です。 ドームを広げられるスペースがないときには、スクリーンでの上映も行っています。各病院・施設の条件に合わせて、プラネタリウムを実現しています。

また、ドームでの上映1回につき、車椅子であれば約5台、子ども5〜10人と付き添いの大人の方が定員の目安となります。上映時間もメンバー構成や患者さんの 体調などを見ながら調整が可能です。一日に何回も上映することで多くの方にご覧いただけます。

Q  感染の問題など、病室から出られない患者さんもたくさんいます。

A : 病室から出られない患者さんのために、個室対応も可能です。天井に星空を映すなど、ベッドから起き上がれない患者さんが個室でプラネタリウムを楽しむことも♪

プロフィール

高橋真理子 たかはし・まりこ (宙先案内人)

北海道大学理学部・名古屋大学大学院宇宙理学専攻でオーロラ研究に携わりながらも、いつかミュージアムをつくりたいという夢をもつ。 1997年より山梨県立科学館準備室、翌年より天文担当として、「つなぐ」「つくる」「つたえる」をキーワードに、プラネタリウムを通じたユニークな活動を展開。 2013 年4月より独立。星空工房アルリシャ代表。これまでの経験を活かして、多方面で活躍中。「星を介して人をつなぎ、ともに幸せをつくろう」を ミッションに「星つむぎの村」を立ち上げ、その共同代表も務める。山梨県立大学、日本大学芸術学部、帝京科学大学非常勤講師。
2008 年、人間力大賞文部科学大臣賞受賞。
2013 年、日本博物館協会・活動奨励賞受賞。  
「 病院がプラネタリウム」の詳細は、星空工房アルリシャのホームページをご覧ください。
星空工房アルリシャhttp://alricha.net/
星つむぎの村http://hoshitsumugi.org/

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著者プロフィール

今村 美都  いまむら・みと

医療福祉ライター
1978年 福岡県生まれ
津田塾大学国際関係学科卒。
早稲田大学文学研究科(演劇映像専攻)修士課程修了。
大学在学中、伊3ヶ月・英6ヶ月を中心にヨーロッパ遊学。
『ライフパレット』編集長を経て、医療福祉ライター。
https://www.medicaproject.com/

(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2016年JUL-OCT)

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