2023.02.04
日比野コレコ
河出書房新社 定価1540円
著者が大学受験を終えてからの短期間に書いたという本書。ナナと静、ビルE、17歳から18歳という季節でもがく高校生らの物語は、まるで新しいリズムの文体で綴られる。この言葉は、脳を洗い、魂を踊らせる。
「言っちゃいけない」「書いちゃいけない」「思っちゃいけない」無意識に感じていたことが軽々と言語化されていく。どきりとした次の瞬間には、もうこの言葉のドライブに連れていかれてしまっている。次は何が起こるのか、どこへ向かうのか。全く想像がつかない。倫理や規則、世間のルールはさっと乗り越える鮮やかさ。不安や闇や絶望を語っていてさえ、とことん乾き、色彩がにじむ。読みながらどくどく湧き出るのは、ドーパミンと爽快感だ。
これまであらゆる物語で大人が描いてきた17歳をニセモノのように感じる。17歳がパーソナルな呪文で刻んだ17歳の時間。稀有な青春小説でもある。ナナや静、ビルEがどれだけ毎日を罵倒し悪態をついても、どこまでも言葉の力に満ち満ちていて詩的。そんなことあるだろうか? ある。本書のなかに。
(紹介:Floating Stories)
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