2022.05.30
エルヴェ・ル・テリエ
早川書 定価 2970円
ニューヨーク、パリ、フィラデルフィア、ラゴス──様々な都市で暮らす様々な人々の点描が続く始まりに、ネスカフェの「朝のリレー」みたいだなと眠たく思っていると、突然衝撃がやってくる。航空事故をきっかけに、まさに「異常」としかいえない状況が発生し、ワシントンDCを中心に、各国の首脳陣を慄かせる。小説の主眼は、そうした状況に対する人々の行動の多様性とドラマにある。何かSF的な状況が起きてももう驚きもしないような2020年代を生きているからこそ、この「異常」な状況には不思議なリアリティとスリルがある。そしてなぜか随所に仕込まれた笑いポイントには吹き出すしかない。
フランスの格式高い文学賞の、ゴンクール賞受賞作。受賞作は芸術的には優れていても、あまり売れないのが業界の常識というなか、すでに本国で110万部を突破しているそう。知的でダイナミックでとことんブラック。藤子不二雄のSFや赤塚不二夫のシュールさが好きな人は、まず間違いなく楽しめると思います。
(紹介:Floating Stories)
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