2022.05.03
逢坂冬馬
早川書房 定価2090円
前回紹介した『戦争は女の顔をしていない』にインスパイアされて書かれたと言われる作品です。昨年のアガサ・クリスティ賞作品で、初めて審査員全員が満点をつけたと、発売前から大きな話題となりました。
もちろん、舞台はソ連とドイツ。史実とフィクションがないまぜになって進行するドラマに、圧倒されます。主人公はソ連の女性スナイパー(狙撃兵)。主人公は架空の人物ですが、ソ連の赤軍には女性狙撃兵が実在しました。壮絶な戦闘シーンや女性狙撃兵同士の友情の描写だけでなく、戦争に関わった、苦しめられた他の女性たちも描かれています。この視点は『戦争は女の顔をしていない』へのオマージュから来ているのかもしれません。
図らずも、ロシアのウクライナ侵攻と、この物語がシンクロしてしまいました。この作品には、ソ連におけるウクライナの立ち位置やロシアとウクライナの関係も少し説明されています。それよりも、戦争の犠牲になるのは、いつでも弱者であり、そのことは、ウクライナでもロシアでもドイツでも変わりはないこと。正しい戦争など一つもないこと。この作品は、そのことを教えてくれます。
(紹介:戦争はやっぱり誰の顔もしていない?)
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