2021.12.04
著者 アトゥール・ガワンデ 訳者 原井宏明
みすず書房 定価:3,080円
長寿社会は人生に多くの選択肢を与えたと同時に、 老いた時、家族や子供たちに老後の「援助」を望むというかたちで、関わる者すべてに負担と不幸をもたらすこととなってしまった。
「施設(ナーシングホーム)は病院みたい、家じゃない。」
医師として関わる中での言葉に、著者は考えさせられることとなる。
では「家」とは一体何なのか?高齢者の安全とは何か?
自分のことが、自分でできなくなった時、誰であっても幸せでいることは不可能なのか?
年をとり、自分の世話ができなくなった時、何が生きがいを与えてくれるのだろうか?
本書は、死についてスピリチュアルな側面や死生学、あるいはマズローの欲求5段階やキューブラー・ロスによる死の受容モデルなどを用いて解説する類のものではない。 人々に死に方の指針を与えるものでもない。
社会が人生の最後の段階について避けてきた結果、起こっていることや避けることのできない死について著者がこれまで経験したエピソードを短編小説のように綴りながら、死にゆく人に何ができるか、著者を通じて読者も自然と考えさせられる物語になっている。
本書の舞台はアメリカであり、医療や介護の制度は日本と異なる部分も当然ある。
しかしながら、そこに登場する多くの人の心情や行動は、環境は違っても、私たち読者に「豊かに死ぬ」ためには何が必要なのか、さまざまな読後感を与えてくれるはずだ。
(紹介:シムノート)
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