2020.10.03
ブレイディみかこ
筑摩書房 定価 1,350円+税
英国在住の保育士でもある著者の最新作。彼女の他の著作のように、社会の端で生きる人々の様子と現代社会の構造を熱く冷静に炙り出す、鋭いレポートだ。
今回の題材は、英国の労働者階級のおっさん。彼らの多くが、英国のEU残留を問う選挙で離脱派に投票したことから、残留派などから問題視される
存在だという。しかし、彼らには彼らの、社会を守ろうとする信念があり、一人ひとりは愚直なまでにハートを大事にする昔気質の人々でもある。
ホームレスの青年を自宅に泊めてあげ、外国人の子どもの顔についたチョコレートをふき、シングルマザーの子どもをあやしてあげる。
格差と分断が深まる英国で、その狭間に追い込まれながら生きるおっさんたちのドラマの背景には、グローバル経済により歪み続ける社会がある。
おっさんたちはそれでも生きる。地べたで生きる人々を描き続ける著者のまなざしと言葉から、今回も読み手はガッツを受けとる。
(大橋礼子)
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