2020.03.26
高村 薫
毎日新聞出版 定価1,800円+税
2017年早春、上池袋のアパートで、同棲相手にスケートボードで27歳の女性が撲殺された。その女性は、2005年に武蔵野の地で起きた未解決殺人事件の重要参考人少女Aとして俄かに浮かび上がり、時計の針は12年前へと逆回りする。合田雄一郎シリーズ6作目。「マークスの山」「照柿」「レディージョーカー」などの難事件に立ち向かった合田雄一郎は、その武蔵野の事件では当時現場の指揮を執ったが、すでに現場を離れ、警察大学校の教授となっている。
武蔵野を舞台に、2005年と2017年を往還しながら、少女Aと周囲の人たちの生活と思いが克明に描かれていく。事件の再捜査を軸に物語は進むが、ミステリーというよりも、生々しい群像ドラマを見せつけられる、高村薫の描写力に圧倒される小説。
(中森明菜じゃないのよ、ロラン・バルト)
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