2020.11.10
明石 伸子 (日本マナー・プロトコール協会 理事・事務局長)
Q 同僚の結婚披露宴に招待されました。仲のよい友人でもあるので、どのようにお祝いするのがよいでしょうか。 また、会場は一流ホテルで、少し改まった雰囲気のようです。当日、注意したほうがよいことについても教えてください。
A : 結婚披露宴は人生最大の祝宴。心からのお祝いの気持ちを伝えたいものです。普段から仲よくしていると、形式的な祝い方は親しさに欠けるようで 抵抗がある人もいるようです。しかし、社会人としてのお付き合いは、メリハリをつけるのが大切。昔から伝わる習慣には、相手を大切に思う気持ちが 受け継がれているので、カジュアルにするのは禁物です。
Point1: お祝いは事前に差し上げましょう
最近は、披露宴会場にご祝儀の現金を持参する人が大半ですが、本来は事前に差し上げるほうが丁寧です。また、主催者側の立場からも、当日、現金を管理するのは 大変なので、「できれば事前にいただきたい」というのが本音のようです。
事前にお祝いを差し上げる場合は、相手の都合を聞いて持参するのが最も丁寧な贈り方。少し前までは「大安の午前中」が吉日とされましたが、 忙しい昨今はこれにこだわる必要はありません。お互いに都合のよい日時に手渡すことができれば、お祝いの気持ちも直接本人に伝えることができます。
また、現金は現実的で無難ですが、品物を贈ってもよいでしょう。ただしその場合は、必ず、新郎新婦の意向を聞きましょう。好みでない物やすでに 購入済の物をもらっても喜ばれません。同僚数人で披露宴に招待された場合などは、本人に予算を伝え、要望を聞いて値段の張る品物を贈るのも記念に なってよいものです。
また、結婚披露宴に招かれたときに最も悩むのが、ご祝儀の金額。基本は「食事代+お祝い」と言われますが、金額の目安は、相手との関係や招待を 受けた会場の〝格〟や披露宴の形式、さらに地域によっても相場感が異なります。本来は自分と相手との関係なので、人によってお祝いの金額が異なって 当然ですが、どうしても決めかねるときは自分と同格と思われる人に相談するなど、周囲の意見を聞いてもよいでしょう。
Point2: 品物には掛け紙をかけ、現金は祝儀袋に包みます
品物を贈る場合は、熨斗(のし)と結びきりの水引が印刷された「掛け紙(かけがみ)」をかけます。これは、昔からのしきたりが簡略化されたもの。 本来、進物を贈る場合は、清浄なものの印として白い和紙で品物を包み、その上から水引で結んで差し上げていました。右肩についている紅白のちいさなものが 「熨斗」で、これは〝おめでたいもの〟を表す印。乾燥させた鮑をのした(伸ばした)「のし鮑」を紙で包んだものなのです。「鮑」という最高の食材を神様に 供えたことの名残からきています。
熨斗は祝儀袋にもついています。祝儀袋は、中に包む金額に見合ったものを選びましょう。結婚の場合は金銀の水引がかかった祝儀袋が一般的です。 水引は用途によって結び方が異なり、結婚のような人生に一度きりのお祝いには「あわび結び」を用います。鶴などをあしらった豪華な水引細工の祝儀袋もありますが、 これは十万円以上の金額を包む場合。また、現代風のしゃれたデザインのものもありますが、あまりカジュアルなものは、立食パーティのような披露宴の場合に とどめておくのが無難です。
Point3: ご祝儀は袱紗に包みましょう
直接ご祝儀を手渡す場合や、披露宴会場に持参する場合は、祝儀袋を袱紗(ふくさ)に包むとスマートです。これも、清浄感を大切にする日本ならではのしきたりで、 相手に渡すまでにチリやホコリにまみれないようにするための配慮。購入時についているビニール袋に入れたまま持って行ったり、バッグから直接出すのは控えましょう。
袱紗は、祝儀にも不祝儀にも使うものなので、社会人になったら一枚は持っておかれるとよいでしょう。慶弔両方に使える紫色の正絹のものが便利です。 また、最近は、包まなくてもよい二つ折りタイプのものなどもあります。百貨店のフォーマルウェアのコーナーなどにあるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
なお袱紗の包み方にはルールがあり、慶弔によって異なります。慶事の包み方は以下です。
Point4: 友人として好感がもたれる服装で参列しましょう
クールビズに見られるように、最近は服装全般がカジュアルになっていますが、結婚披露宴は正式な祝宴であり、できるだけ上品な印象のフォーマルウエアを着用しましょう。
心得ておくことは以下のような点です。
◦ 主役の新郎新婦より華美で目立つ服装は配慮に欠けるので控える。
◦ 女性は、花嫁の色である白やオフホワイト、あるいは肩など肌が露出したドレスは避ける。
◦ 男性参列者の服装はダークカラーなので、女性は黒一色よりも明るい色のドレスの方が親族から喜ばれる。
◦ 二次会も含めカジュアルなパーティ形式であっても、普段着のような服装は避ける。
◦ 夏でも生足はNG。また、ミュールのようなサンダルもフォーマルな靴としては不適切。
◦ パーティ会場では小ぶりのバッグを持つのがマナー。大きな鞄はクロークに預ける。
また、服装だけでなく会場内での言動にも配慮が必要です。披露宴は親族や会社の上司など、新郎新婦にとって大切な人達を招いています。〝友達を見れば人となりが分かる〟と 言われるように、新郎新婦の交友関係は関心が高いものです。人生の晴れ舞台で主役に恥をかかせないように、年長者の参列者にはすすんで挨拶をし、友人同士ではしゃぎ過ぎる ことのないように、言葉づかいや話題選びにも注意が必要です。
価値観の多様化に伴って結婚の形式もさまざまに変化しています。かつては仲人を介して家と家の結びつきが主でしたが、最近では本人達の意思が中心になりました。 それぞれの事情によって盛大な披露宴をする人もいれば“ジミ婚”と言われるように親族やごく親しい友人だけを招くもの、挙式だけで披露宴はしないケースや、 挙式もせずに入籍だけで済ませる場合など、ブライダル事情も千差万別です。しかし変わらないのは、結婚が人生の大きな節目であるということ。どのような形式で あっても、大切な人には心からの祝福の気持ちをしっかり、そして丁寧に伝えたいものです。
著者プロフィール
NPO法人日本マナー・プロトコール協会 理事長
青山学院大学卒業後、日本航空客室乗務員、会社役員秘書などを経て1996年CS(顧客満足度向上)コンサルタントとして独立。
2003年NPO法人日本マナー・プロトコール協会を設立し、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の実施を通じてマナーやプロトコールの普及に力を注ぎ、講演、研修などで活躍。
その他、ゆうちょ銀行社外取締役、吉野家ホールディングス社外取締役、NHK経営委員、学習院女子大学非常勤講師など。(2020年4月現在)
「NPO法人日本マナー・プロトコール協会」
マナーを学びたい方に
協会が実施する通信教育講座「マナー・プロトール検定2級完全合格講座」は、ビジネスマナー、テーブルマナー、冠婚葬祭、季節の贈答、日本のしきたりなど、
日本人として社会人として必須のマナーやプロトコール(※)に関する知識が学べ、さらにこの講座を一定基準以上で修了した方には、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の
2級が在宅で受験できます。
※プロトコールとは、本来は国家元首間の会談などの公的な国際儀礼のことを指します
「マナー・プロトコール検定完全合格講座」
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