2020.10.21
明石 伸子 (日本マナー・プロトコール協会 理事・事務局長)
Q1 社会人として恥ずかしくないように、きちんとした手紙の書き方を教えてください。
A:手紙には、昔から受け継がれてきた 「形式」があります。ちょっと堅苦しい印象があるかもしれませんが、形式を覚えてしまえばかえって簡単で、しかも相手に失礼になることはありません。
Point1 : 形式を確認しましょう
気の置けない友人への私信は別として、改まった場合や目上の方に出す手紙は、形式に則って書くことが必要です。正式な手紙は全体に文語表現が多く、
慣れていないと堅苦しい印象に思えるかもしれません。しかし形式を無視して書くことは、それを知っている人からすれば、馴れ馴れしいと思われ、
相手から尊重されていないと受け取られかねません。きちんとした手紙の書き方を知っていることは社会人として不可欠なことで、覚えてしまえばかえ
って簡単です。前文、主文、末文の基本構成は左のようになっていて、それに従って書き進めましょう。
Point2 : 受け取った手紙で、あなたの印象が決まります
手紙の印象は、受け取ったときが〝第一印象〟になります。封筒の表書きも、丁寧に書きましょう。余白の取り方や文字の大きさなど、バランスが大切。
もちろん、中をあけたときの便箋も同様です。
最近はパソコンで手軽にできるので、手書きの手紙は敬遠されているようですが、気持ちを込めて丁寧に書かれていれば手書きに勝るものはありません。
文字が美しいにこしたことはありませんが、それ以上に手書きの手紙からは、相手の心や人柄が伝わってくるものです。手紙のサンプルを載せておきますので、参考にしてください。
なお、弔事の場合やお見舞いの手紙は、相手を気遣うことが目的なので儀礼的な挨拶は除き、いきなり本文から入ります。最後の「追って書き」も、 繰り返しをイメージさせるので書きません。また、重なることを避けるために便箋は1枚、封筒も一重のものを使用します。したがってそれ以外の場合は、 便箋は2枚以上にし、封筒は二重のものを使うのがマナーです。
Point3 : 便箋や、筆記具にも格があります
目上の方に対してや、礼状や詫び状のような格式に配慮する手紙は白無地の便箋に縦書きが基本と言われるのは、昔、巻紙を使用していたからでしょう。
しかし、友人など親しい人に出す場合は、季節感のあるイラストなどがあしらわれた便箋や封筒を用いると、あなたらしさが伝わってよいでしょう。
筆記具は、毛筆、筆ペン、万年筆、水性ペン、ボールペンの順に上格となります。鉛筆やカラーペンはいかにも幼稚な印象になるのでやめましょう。
Point4 : 挨拶言葉には決まった表現があります
挨拶言葉はよく使われる言い方があります。特に、「頭語」と「結語」はセットになっているので間違えないようにしましょう。改まった場合は「謹(つつしむ)」
という字が付きます。
その他、「時候の挨拶」には季節感が盛り込まれており、「安否の挨拶」などは「ご無沙汰しておりますがいかがお過ごしでしょうか」とか
「平素はお心遣いをいただきありがとうございます」など、よく使われる言い方があります。具体例を参考にしてください。
Q2 報告書が苦手です。ビジネス文書の基本を教えてください。
A:仕事で作成する文書には手紙と異なった 「形式」があります。特に社内文書は、内容を端的に伝えることを優先させるので、儀礼的な挨拶は省き、文章は簡潔にするとよいでしょう。
Point1 : 要点を絞ってわかりやすくまとめる
仕事の報告はA4サイズ1枚で行なうのが基本です。それ以上の内容を伝えたい場合は、1枚目に簡潔に要点をまとめて、2枚目以降に詳細を記します。
社内文書は、社内の通達や連絡、業務上の報告、提案、企画、記録に関する文書で、社内業務を円滑に進めることを目的としています。
実用的で合理的な文章を心掛けましょう。作成に必須の内容は以下です。
①日付 文書の提出日、または発信日を記す。
②宛名 提出先は名前だけでなく、部署名や役職も入れたほうがよい。
③作成者 部署名、役職名、氏名の順に書く。
④表題 「●●の件」「●●の報告」など、内容が一目で分かるようにする。
⑤内容 提出文書は、5W1Hを意識し1案件でまとめる。
Point2 : 結論から伝え、経過や状況報告は後に
ビジネス文書は内容を分かりやすく、かつ正しく伝えることが大切です。したがって、文章はできるだけ短く、簡潔にします。
分かりやすい文章を書くための要点は以下です。
①結論を先に まず結論や趣旨を先に書き、その後に原因や経過を伝えます。 そして最後に、自分の意見や提言で締めくくるのが基本です。
②一文を短く 余計な修飾語などを省き、主語、述語を明確にし、 一文の長さは出きるだけ短くすると、分かりやすくなります。
③時系列をはっきりさせる 経過報告が必要な場合は、時間の経過に沿って 箇条書きにすると、状況を把握しやすくなります。
④事実を正しく伝える 自分の感想を入れたり、曖昧な表現は避けましょう。 特に、金額や数量などは間違えのないように十分に注意します。また、客観的なデーターなどを入れると説得力が増します。
電話やメールなど、手軽で便利な情報伝達手段が浸透していますが、手紙やビジネス文書は、書く人の人柄や教養、仕事上の判断力などを感じさせるものです。 基本を確実に理解し、しっかりした内容のものが書けるように心掛けましょう。
著者プロフィール
NPO法人日本マナー・プロトコール協会 理事長
青山学院大学卒業後、日本航空客室乗務員、会社役員秘書などを経て1996年CS(顧客満足度向上)コンサルタントとして独立。
2003年NPO法人日本マナー・プロトコール協会を設立し、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の実施を通じてマナーやプロトコールの普及に力を注ぎ、講演、研修などで活躍。
その他、ゆうちょ銀行社外取締役、吉野家ホールディングス社外取締役、NHK経営委員、学習院女子大学非常勤講師など。(2020年4月現在)
「NPO法人日本マナー・プロトコール協会」
マナーを学びたい方に
協会が実施する通信教育講座「マナー・プロトール検定2級完全合格講座」は、ビジネスマナー、テーブルマナー、冠婚葬祭、季節の贈答、日本のしきたりなど、
日本人として社会人として必須のマナーやプロトコール(※)に関する知識が学べ、さらにこの講座を一定基準以上で修了した方には、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の
2級が在宅で受験できます。
※プロトコールとは、本来は国家元首間の会談などの公的な国際儀礼のことを指します
「マナー・プロトコール検定完全合格講座」
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