2020.10.14
明石 伸子 (日本マナー・プロトコール協会 理事・事務局長)
Q1 まもなく新人スタッフが入ってきます。先輩として、最初にどのようなことを教えるとよいのでしょうか。
A:職場の雰囲気は、そこで働く人たちによってつくられるので、 新人スタッフが入れば当然、その人の性格や仕事に対する姿勢などによってムードが変わります。新人が温かく迎えられるためには、本人の仕事に対する姿勢や、先輩、上司への接し方が問われます。 一人の先輩としてまず新人に教えてあげてほしいのは、そうした「社会人としての心得」ではないかと思います。
「明・元・素」という言葉をご存知ですか? これは、職場で好かれる人の要素を表わしたものです。具体的には「明るく、元気で、素直な人」が、先輩や上司から可愛がられ、 そして結果的に成長するというのです。ですから、新人を指導する立場になったら、まず、〝職場での心得〟や指導を受ける際の〝姿勢や態度〟について教えてあげましょう。
Point1 : 挨拶の励行
明るい挨拶が交わされる職場は、活気があってコミュニケーションもよくなります。挨拶は目下の者から声をかけるのがマナーです。朝の「おはようございます」から始まって、
入室時や着席時には「失礼します」、食事や退勤時は「お先に失礼します」など、どんな場合もしっかり挨拶ができるように指導しましょう。
▼ 新人の元気な挨拶は、職場のムードを明るくします。また、新人に挨拶の習慣を身につけさせるためには先輩スタッフ自身が率先垂範することが大切です。新人を迎える際には、
職場の確認事項としてあらためて挨拶の徹底をさせるとよいでしょう。
Point2 : 感謝の気持ちをもたせる
互いにねぎらいの気持ちをもつことは、ともに働くスタッフ間の信頼関係を深めます。新人の指導は、通常業務にプラスアルファの負担がかかるものです。
新人にもそのことをしっかり認識させて、指導をしてもらったら必ず「ありがとうございます。勉強になりました」と感謝の気持ちを伝えることを習慣にさせましょう。
▼ 新人に感謝の気持ちがないわけではないでしょうが、最近はそうした気持ちをしっかり相手に伝えられない人が増えています。言葉に出してお礼やお詫びを言うことの大切さを教え、
それを励行させるようにすると、指導に当たる先輩や上司も嬉しいものですし、互いに感謝や反省の心をもつ職場風土が育まれます。
Point3 : 筆記具を携行し細かくメモをとらせる
最初は右も左も分からず、新人は覚えることばかりの毎日が続きます。一度言われたことは二度と聞き返さなくても済むようにしようという積極的な姿勢が、メモをとる行動となるはずです。
教えられたことは必ずその時に細かくメモをとることを習慣とするように、新人を指導しましょう。
▼ 指導をする側からしても、自分の話をしっかり聞いていて、そのつど細かくメモをとっている姿を見ると、仕事に対する意欲を感じるとともに相手に対する好感度も高まり
「もっと教えてあげたい」と思うものです。
新人教育のスタートは、知識や技術、職場のルール以前に、まず職業人としての〝人への接し方〟をしっかり身につけさせることにあるのではないでしょうか。
そして、そうした心得をもって仕事に臨んでいれば、ひいては患者さんへの接し方にも自ずと変化が表れてくるのではないかと思います。
Q2 新人を上手に教育するためのポイントを教えてください。
A:人に何かを教えるには、まず自分自身がしっかり理解していなければ なりません。さらに、理解度の異なる相手にそれを分かりやすく伝えることができなければなりません。その意味で、人を指導するということは自分を成長させるよい機会になります。 上手な「教え方」に加え、どのように指導すれば、あなたの思いが伝わるかについてお知らせしましょう。
「やってみせ、言ってきかせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」。これは山本五十六海軍大将の言葉ですが、教育のあり方を端的に示しているものとして広く知られています。 効果的な指導のためには、まず実際にやってみせ、そしてそれについて説明し(逆でも可)、そして本人にやらせてみて、そして褒めたり、できなかった点をしっかり指摘しないと、 部下の教育はできないというものです。まさに教育とは、このようなことの繰り返しではないかと思います。
Point1 :「基本」をしっかり身につけさせる
どのような世界でも、まず「基本」が大切で、何を「基本」として教えられたかによって、その人の将来の仕事のやり方が変わってくるように思います。先輩としてさまざまな経験をしていると、
あれもこれも教えてあげたくなるものですが、経験のない者からすると情報が多すぎると余計に混乱するだけです。ですから、まず自分自身の確認も含めて、知識や技術の「基本」となることを整理し、
それをしっかりマスターできるように新人の指導にあたることが大切です。
▼ ともすると、仕事の基本ルールを先輩自身が守っていないことがあります。臨機応変な対応が大切なのはもちろんですが、原則を知らなければどのように対応してよいかの判断ができません。
新人を迎えるにあたって、まず職場内の意思統一をしておくことも大切でしょう。
Point2 : 指導計画と目標設定
組識にとって人を採用することは、大きなコストが伴なうものです。早く一人前になって、職場の戦力となってくれるようにするためには、どのように新人を育てるかについて
計画を立てることが大切です。それは責任者の仕事ですが、担当となった者も自分自身が指導する期間と内容を責任者と話し合い、指導内容を整理して、事前に準備をしておくことが大切でしょう。
また、それに則って新人にも目標を立てさせることも必要です。
▼ 指導計画は、日付を入れて作成し、その時点でできる具体的な内容を設定することです。その目標達成のために、必要な知識やスキルをリストアップし、 その修得度を必ずチェックするようにします。こうした指導計画は、本人にも伝え、新人には週間、月間の目標を立てさせましょう。
Point3 : 褒める、叱るのメリハリをつける
人のやる気は、自分がどのように評価されるかによって変わります。それには客観的評価が不可欠で、できたら「褒める」、ダメなら「叱る」ことです。
その際、その理由も必ずきちんと説明しましょう。褒められても叱られても、納得できなければ教育効果は表れません。また、その前提になるのは何といっても「愛情」です。
親身に指導されているという自覚があれば、相手の言葉は自然と受け入れられるものです。「あなたに期待している」「頑張ってね」という日頃の声掛けも大切なコミュニケーションです。
▼ 最近は、少しきつく叱るとメゲてしまう人が多く、叱り方は難しいものです。信頼関係が築けるまでは、できるだけ多く褒めて、その後は「褒める」「叱る」「改善を期待する」という
ようにするとよいでしょう。具体的には「○○さん、今日は昨日に比べて随分よくできるようになりましたね。しかし、まだまだ細かいところの作業が雑で、それでは仕事を任せられませんよ。
明日はどんな点に気を付けて作業をするとよいですか?」というようにするとよいでしょう
4つの「じんざい」という話がありますが、人は育て方によって「人財」にも「人材」にも「人在」にも、「人罪」にもなるというものです。 組識にとって財産となるような人になるのか、それとも“ただいるだけの人”なのか、あるいは組識の足を引っ張るような人になってしまうのか、 その分水嶺は、やはりその組識の「人の育て方」にあるのではないでしょうか。
著者プロフィール
NPO法人日本マナー・プロトコール協会 理事長
青山学院大学卒業後、日本航空客室乗務員、会社役員秘書などを経て1996年CS(顧客満足度向上)コンサルタントとして独立。
2003年NPO法人日本マナー・プロトコール協会を設立し、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の実施を通じてマナーやプロトコールの普及に力を注ぎ、講演、研修などで活躍。
その他、ゆうちょ銀行社外取締役、吉野家ホールディングス社外取締役、NHK経営委員、学習院女子大学非常勤講師など。(2020年4月現在)
「NPO法人日本マナー・プロトコール協会」
マナーを学びたい方に
協会が実施する通信教育講座「マナー・プロトール検定2級完全合格講座」は、ビジネスマナー、テーブルマナー、冠婚葬祭、季節の贈答、日本のしきたりなど、
日本人として社会人として必須のマナーやプロトコール(※)に関する知識が学べ、さらにこの講座を一定基準以上で修了した方には、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の
2級が在宅で受験できます。
※プロトコールとは、本来は国家元首間の会談などの公的な国際儀礼のことを指します
「マナー・プロトコール検定完全合格講座」
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