2024.02.26
2023年6月13日、ザ・プリンス・パークタワー東京(東京都港区)で開催された「2023年度日本看護連盟通常総会」において、石田昌宏参議院議員が、2025年に行われる次期参議院選挙の組織内候補予定者に決まりました。
そのときの「決意表明」において、石田議員は「看護現場の環境を少しでも良くしたい、そんな思いで、これまで参議院議員としてさまざまな政策に取り組んできたが、自分の中では、まだまだ、もっとだと感じている。これからは1人ひとりの看護の質が求められる時代で、質が高ければ、それに見合った処遇が必要。質に見合う処遇を受け、看護師がプライドを持って仕事をし、私生活も豊かに暮らすことができる~そんな未来を実現するために、私にはやらなければならないことがある」と、力強く語りました。
あれからまもなく半年、あらためて石田議員に「組織内候補予定者」となって、どう考えているのか、そして、これからどう行動していくのか、お話をうかがいました。
まだまだ道半ば、現場の皆さんと一体となって前へ進みたい
――次期参議院選挙(以下:参院選)で三期目を目指されることになりました。組織内候補予定者となって半年、今のお気持ちは?
石田:まずは 「感謝」です。
本当に頑張っているすべての看護職の皆さんに感謝の思いでいっぱいです。
そして「決意」です。看護は、あらゆる人々の生き様をより幸福に導くことができる。だからこそ私は「看護政策の実現は、国民すべてにとって重要である」と確信しています。
これまで「看護の現場を良くして、看護職が力を最大限に発揮できる環境をつくりたい!」という思いで活動してきました。そして、参議院議員として「労働環境の整備」「人材の確保」「資質の向上」「教育の充実」などさまざまな政策に取り組んできましたが、まだまだ道半ば。さらに看護政策を実現していくために、現場の皆さん、看護連盟・看護協会と一体となって活動していくことを、あらためて決意しています。
看護職の処遇改善につながる政策が実現した
――石田先生は「現場の皆さん」との一体感を大切にされているなといつも思います。新型コロナウイルス感染症対策で2022年2月から始まった「慰労金」も、当初は「手当て」扱いの予定だったところを、現場の実情に合わないと感じられて働きかけたのですよね?
石田:「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」のことですね。これは当初「手当て」として支給されることで検討されていましたが、それでは新型コロナウイルス患者を受け入れている医療機関の職員にしか支給されません。「医療・介護・福祉のあらゆる現場で対応しているのだから、すべての看護職に支給されるべき」と強く働きかけました。その結果、全員を対象にした「慰労金」とすることができました。しかし、これもすべての看護職が、それぞれの役割を全うしたことで実現できたのです。
「私は看護職である」という使命のもと、コロナ禍の最前線で人々の命や暮らしを守り続ける看護職の姿を見た国民が、看護への感謝の思いを高め、自らの意思で「看護職を助けたい」という世論を生みました。そして、それが「慰労金」や診療報酬の「看護職処遇改善評価料」(以下:評価料)の新設につながったことは忘れられません。
――評価料も当初は対象の看護職の数がずいぶん少なかったように思います。最終的には57万人にまで増えてよかったです。
石田:評価料はコロナ対応に当たる三次救急医療機関の看護職20万人が対象で、収入の3%(月額平均1万2000円相当)の引き上げが検討されました。しかし「これでは看護職に分断(給与の差)が生じてしまう」と危惧をし、看護連盟・看護協会とともに声を上げました。その結果、対象が57万人にまで広がりました。
ただ、それでも2022年2月時点の全国8193病院の看護職168万人のうちの三割ちょっとです。正直、悔しかった。「このままでは終われない!」と思いました。
――その気持ちが、1991年に等級の新設があって以来、ずっと変わっていなかった「国家公務員医療職俸給表(三)」(以下:俸給表)の改正につながったわけですね。
石田:俸給表は、国家公務員である国立病院や国立大学附属病院などに勤務する看護職員の給与に関わるものです。私は看護連盟・看護協会とともに、俸給表を決定する人事院や関連する省庁に働き続けました。この国家公務員の俸給表を参考にしている民間の医療機関は多いので、まずは医療職俸給表を改正して、その波及効果を狙ったのです。粘り強く活動を続けたことが、看護職の処遇改善や賃金アップの実現につながりました。
2023年4月の施行後、この改正を反映して給与が上がった病院も増えてきていると聞いています。俸給表改正は単に給与のアップだけでなく、もっと重要なのは「看護職がキャリアアップに伴い、より高い職務の級に昇格できる環境整備をはかる」という点です。それは看護職の処遇改善に直結します。
いつも現場目線で看護の未来を見据えていく
――次期参院選まで1年半くらいでしょうか。あらためて、これからどのような思いで、どう活動していくのかを教えてください。
石田:新型コロナウイルス感染症は5類に移行しましたが、医療現場は、今もなおコロナ禍の最中にあります。現在、コロナの特例ルールが医療や介護等の現場で継続されるよう努力をしています。
また、俸給表の改正により、看護職の処遇改善は前進したものの、まだまだ不十分です。現場の皆さん、看護連盟・看護協会・看護職議員が一丸となってつくることができたこの処遇改善の大きな流れを、引き続き推し進めていきます。
3期目に向けて、私は「現場の看護職の心強い仲間」であると同時に、「看護の未来に希望を持てる看護職議員」でありたいと思います。「看護の未来」を考える上で大切になるのが、先日改定された「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」です。
基本指針は約30年ぶりに見直されたのですが、当時は看護師が圧倒的に足りない状況で、看護師の確保がなにより必要だった。その後、高齢社会に向けて、より医療は重症者に特化し、介護保険の準備も始まり、患者の権利が言われ、医療安全への意識も高まった。いわば、今の時代のスタートラインだったのが30年前です。
そして今、新たな時代が始まっています。高齢化はあたりまえのことだし、少子化による人口減少を迎えて看護はどうあるべきか?人が足りなくなり、看護職の成り手も減る。だから、「看護職を増やす」の一辺倒ではなくて、数が足りないなら仕事を減らすこと、そして看護師一人ひとりの質を上げていくことを同時に取り組んでいかないと成り立たない時代になってきました。看護政策・看護管理のあり方などを大きく変えていかなければならない時期を迎えています。
さらに追加すると「多様性」「一人ひとりのワークライフバランス」という新しいキーワードも現れています。このような時代だからこそ30年ぶりに指針が見直された意味があります。今までの看護を整理した上で、今後、人口減少という世界の中、新しい時代の看護に取り組まなければならないのです。
私自身、議員になってからしばらくは、潜在看護師の登録制をはじめ、「人が足りないこと」に対処してきました。ところがコロナ禍が始まって、登録制で復帰したナースの多くは、現実的にはコロナ病棟ではなく宿泊療養施設やワクチンを打つところで頑張ることが精いっぱいだった。そこで思ったのです。「この政策を続けているだけでは無理がある」と。
増やすことは絶対に必要だが、増やすだけではなく、働く環境や看護の質を向上させなければいけない。ずっと思っていたことですが、確信に変わりました。
――その確信が決意表明で述べられていた「やらなければならないこと」なのですね。
石田:そうです。それは「看護の未来に希望をもてる」ことにつながります。未来の技術が導入された看護の世界では、発達したデバイスによるバイタルサイン測定など看護業務の省力化が予測されます。それでも変わらず必要なのは、患者さんの側に寄り添うことではないでしょうか。つまり、ベッドサイドケアに尽きると思います。
患者さんとの関わりの中で、患者さんは治っていく、癒されていく、あるいは病気を受け入れていくというプロセスをたどります。看護はそこに関わっていく。そして、看護師自身も経験を積み重ねていく。この体験を日々の仕事の中で自覚できる時間を持ってほしいし、それが本当に自分のやりたい看護、いい看護なのだと思います。そのためにも環境の改善は大切です。
あらゆる看護の現場で、「今日もいい看護ができてよかった!」と実感できる現場をつくるために、看護職一人ひとりと力を合わせ、全力で取り組んでいきます。未来を創るのは私たちです。一緒に未来を創っていきましょう!
(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2023 NOV-2024 FEB)
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