2022.03.02
パソコン上の仮想空間およびそのサービス「メタバース」。本書『スノウ・クラッシュ』は、メタバースの産みの親である近未来SF小説だ。 舞台は国家の力が弱まり、資本家やマフィアなどの勢力が各々地域支配しているアメリカ。人々が自分のアヴァターをもち「メタヴァース」を楽しむなか、ある怪現象が起きる。「スノウ・クラッシュ」というデジタル・ドラッグが、アヴァターを制御不能にするだけでなく、現実世界の当人も意識不明にしていくのだ。腕利きハッカーの主人公が怪現象の背後にある闇を暴く──というのがストーリー。
本書が、Google、PayPalなどIT企業創業者たちの愛読書というのは、読めば納得する。メタバースだけでなく、Google EarthやSiriなど、現代の技術に類似したものが数多く登場し、多くの起業家たちにインスピレーションを与えてきたことは想像に易い。
さらに、資本家が国家にとらわれず勢力を拡大し、陰で人を支配するためのシステムを組む様子は、GAFAM等が提供するサービスに依存する現代人にとっては示唆的だ。本書の先見性には胸躍らされると同時に、どこか末恐ろしささえ感じさせる。
(紹介:大橋 礼子)
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