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薬を食う女たち

2021.10.31

五所純子
河出書房新社 定価 1,892円

こんな本は読んだことがない。
ひとことで紹介すれば、ドラッグを摂取する女性たちのルポルタージュ。なのだけど、それだけでは本書の引力を到底言い表せない。登場する12人の女性ごとにストーリーが分かれている。ストーリーはすべて、個々の世界観を反射させるかのように、異なる文体で綴られる。週刊誌記事、ラップ、SF、現代詩、シスターフッドムービー、青春小説、Jポップ、深夜のTV番組、SNS――ベクトルの違う設定は、ドリーミンでありながら、ふしぎと何よりも当事者の女性その人自身を浮き彫りにする。
人は一人ひとり、自分のなかに世界をもつ。誰かを知るということは、その世界に触れるということだ。本書は、現代的な表現と言葉でもって、ひとりの人間のなかにある複雑で奥深い世界を召喚する。読み手は個々の世界に何度も出会う。その出会いは常に濃密で、新しい。言葉がもつ呪術的な力をこれほどまでに放射する書物を知らない。

(紹介:Floating Stories)

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