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資本主義リアリズム

2021.05.01

マーク・フィッシャー(セバスチャン・ブロイ、河南瑠莉 訳)
堀之内出版 定価 2200円

鉄の女と呼ばれたイギリスのマーガレット・サッチャー首相は、停滞著しいイギリス経済を立て直すため「この道しかない」 (There is no altarnatives)と、公営事業だった水道・電気・ガス・通信・鉄道・航空を民営化し、さらには金融市場の 規制を撤廃しました。イギリス経済は急回復します。アメリカもレーガノミクスと呼ばれた経済政策で新興企業が躍進・繁栄する ようになりました。日本でも、国鉄がJRに・電電公社がNTTに・専売公社がJTと、国営企業が民営化し、経営の効率化が進みました。
しかし、資本主義システムがもたらす環境問題と格差社会という副作用が、世界的に無視できなくなってきました。 本当に「この道しかない」のか、そう考えるのが現実的=リアリズムなのか、と問う声が近年高まっています。 最近になって日本でもマルクスの資本論が再注目されるようになったのも、その表れの一つでしょう。 また、80年代以降、先進国で「諦め」が広まり、うつ病が増えたのも、フィッシャーが指摘するように、副作用の一つかもしれません。 「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像する方がたやすい」
そんな多くの人たちが抱える不安感を的確に表現した、このフィッシャーのエッセイ集は、今改めて読むべき本と言えます。 (持続可能な精神の健康を求めて)

日本看護連盟のコミュニティサイト アンフィニ
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