2020.03.26
上西充子
晶文社 定価1,600円+税
「嫌なら辞めればいい」「お金がもらえるだけありがたい」「逆らっても無駄」「恥をかくぞ」
こんな言葉を投げかけられたり、自分で思ったり、または人に投げかけたことがない人はいないでしょう。当たり前すぎて、一体いつの時代からあるのかわからない言葉たち。いま面している状況と戦おうとすること、疑問を持つことすら諦めさせ、むしろお前が悪いのだと罪悪感を持たせる力があります。本書はこれらを「呪いの言葉」と認定。そして、この「呪いの言葉」には徹底的に対抗すべきなのだと、対抗手段を伝える令和の白魔術書なのです。
例えば、呪いの言葉を投げかけられた際の有効な切り返し方として紹介されるのは、問いの次数を一つ繰り上げること。相手の土俵に乗らず、「なぜそんな呪いの言葉を投げかけるのか」「こちらを逃げ出せないように縛り付けておきたいのですね」と返せと指南します。確かにこれなら相手に、こちらの戦意がビンビン伝わりそう。思考停止しない、言われっぱなしにならない、相手の空気に載せられない。「負けない」精神と姿勢の作り方は同時に、投げかけられた呪いの言葉に呼応してしまう、自分のなかにある呪い、自分で自分を縛っている呪いを打ち破ることでもあるのだなと気付かされます。
著者は、法政大学キャリアデザイン学部教授。若さ、だらだら残業、母や妻といった役割―2020年の現代社会に潜む様々な呪いを紐解き、言葉の力、人が立ち上がる力こそが呪いを解く手段なのだと圧倒的熱量で語ります。そのエネルギーに触れられるのが、本書の一番の効能なのかもしれません。
(大橋礼子)
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