2020.03.26
2019年4月の日南市議会議員選挙で宮崎県看護連盟青年部の鈴村和枝さんがみごと当選を果たしました。鈴村さんは、一児の母でもあり、訪問看護師としても活躍しています。また宮崎県看護連盟では現在も支部役員、青年部の中心メンバーとして活動しています。
なお、インタビューは2020年1月上旬、宮崎県看護協会の一室をお借りして行いました。
桑原:本日はよろしくお願いいたします。まずは、これまでの看護に関するご経歴をお聞かせください。
鈴村:看護学校に進学したのは27歳の時で、それまではアルバイトや介護の仕事をしていました。私の母が、在宅で祖母を介護していたこともあって介護職になり、紆余曲折を経て看護師になろうと思い立ちました。32歳で国試に合格しました。そして、日南市にある重度心身障害者施設の内科病棟に勤務しました。実家は宮崎市ですが、高校時代からサーフィンをしていて、波がきれいな日南市が好きで移住したんです。
桑原:お母さまの介護されている姿を見て、看護師になろうと思ったんですね。
鈴村:そうですね。国は病院から在宅医療へとシフトしようとしていますが、実際に看護師になって退院支援や在宅に行ってみて、地域に受け皿がないのに自宅に帰して、不安しかないような生活はおかしいと思いました。議員になった今でも、看護現場にいようと思っています。
桑原:それが議員になろうとしたきっかけ、ということでしょうか。
鈴村:それだけではありませんが、制度が変わることで、私たちの生活に大きな影響があるんだとわかって、政治に関心をもつようになりました。でも、周りとは政治の話が全くできない環境でした。誰か若い人が議員になるなら応援しようと思っていたら、自分が立候補することになっていました。
桑原:昨年の統一地方選挙で、みごと当選され、議員になられました。
鈴村:まだ議員になって1年も経たないですが、議員として私が声をあげることが、すごく行政に影響を与えることを実感しています。例えば、私が議会で質問します。すると、次の市の重点戦略プランに、その質問内容が入っているのが見て分かります。私の質問には日南市民の思いや声が入っているので、それが反映されていると日南市のみなさんのためになったなと思います。政治って誰がやっても一緒だとか、何も変わらないという声をよく聞きますよね。でも、こうやって声を出すことで政策が変えられることを、私たち世代やもっと若い世代に知ってもらいたいと思います。
桑原:自分たちが声をあげることで、日南市の政策が変わることを実感されているということですね。
鈴村:とても実感しています。もし声を上げなければ私の視点もなかったことになります。今までと同じような視点で政治がやられることに不満があるなら、若い世代がもっと声を上げていくことが大事だと思います。
桑原:看護連盟のホームページには「現場の声をお聞かせください」というアンケートページがありますが、現場の声を届けることは無駄にはならないということですね。
鈴村:絶対に無駄にはなりません。若い女性議員が年配男性の多い議会に入ると、いくら意見を言っても潰されてしまうとよく言われます。でも、日南市はそんなことはありません。とはいえ、私も初めは気負っていた部分がありました。現場を知っている分、法律もある程度勉強してから市役所の担当者に聞きに行っていました。担当者ができないというと、逆にこうした方がいいんじゃないか? こういう地域もありますよ! と食い下がりました。そうすると、相手は議員に責められていると思って引いてしまいます。そこを、一緒に考えていけるようにしたいと改めたら、受け入れてもらえるようになりました。最近は、あちらから、「こういうこともあります」と問題点を教えてくれたり「また変わったら教えますね」と言ってくださったりするようになりました。
桑原:そこは女性議員だからこそ、また看護の現場で培ってきたからこそ、汲み取れるところがあるのかなと思います。看護の現場から女性の声は非常に大きいものがあると思うので、今後いい形に活かしていただきたいと思います。
桑原:鈴村議員が取り組んでいる政策はたくさんあると思いますが、その中で、とくに看護師の立場から変えていきたいという問題はありますか。
鈴村:これまで取り組んできたものの一つは、小児の任意接種ワクチンです。自費で接種しなければいけないワクチンに対して、宮崎県は助成する市町村には3分の1を助成をしているのに、日南市は助成していませんでした。ロタウイルスのワクチンは、1歳未満で接種しなければいけないのですが、3回の接種で2万~3万円の費用がかかります。子どもを産んですぐのお母さんたちにとって、とくに非正規雇用だと育休・産休が取れなければ一気に収入も減るのに、2万~3万円というのは非常に大きいんです。国は今年10月から定期接種化すると言ってますが、その前に生まれた子たちと差が出てしまうので、議会ではできるだけ10月まで助成してほしいと訴えています。
桑原:大きなくくりで言うと、介護保険制度や診療報酬の改定で、医療現場も福祉現場も変わりますよね。最近思うのは、そういう制度的な問題で患者・利用者がよりよく死ねないというところです。在宅の現場で困っていることはいっぱいあって、そういう声をしっかり上げて制度を改革していかないと、と思います。ただ、やはり国でないと解決できない問題もあります。例えば、書類作成が多くて患者のそばに行けない、とよく言われます。私も同じように思っていました。でも、議員になってみると、書類はしっかりしていないと抜け道ができてしまうので、書類を単になくせばいいというものではないと考えるようになりました。そこはもう私たちではなく国会議員に、たとえば石田まさひろ参議院議員や、たかがい恵美子参議院議員に現場の声をしっかり反映した形で取り組んでもらいたいと思います。私は、介護保険制度は変えられませんが、変えるためにまずは声をあげていきます。
桑原:鈴村議員は、市議会議員として活動する一方で、看護師として訪問看護に携わり、小さいお子さんのお母さんでもあり、さらには看護連盟青年部の活動もされている。一人何役もこなされていますが、何か秘訣はあるんですか。
鈴村:秘訣というほど立派なことはないですが、主人がすごく協力的なんです。例えば、私が夜出なければいけない時は、仕事を早く切り上げて保育園にお迎えに行ってくれます。うちの子は1歳7か月ですけど、風邪をあまり引かず元気に毎朝保育園に行ってくれます。家族を幸せにできないと、その地域も幸せにできないと思っているので、一番に主人を持ち上げて労っています(笑)。主人が支えてくれるからこそ動けるのだと思います。
桑原:先ほど、宮崎県看護連盟の渡部(京子)会長が、お子さんを見ているので、びっくりしました。
鈴村:渡部会長は、いつも「何かある時には連れて来ていいよ」とおっしゃってくださいます。うちの子は青年部会議の時にも連れて来ていました。選挙の時には息子はまだ1歳にもなっていませんでした。しかも、私は働いてなかったので保育園も限られた時間しか預けられませんでした。そんな中、選挙カーで1週間安心して活動することができたのは、みんなが入れ替わり来てくれたからです。本当にありがたいです。また議員は、夜の集まりも多いです。研修や飲み会とか、自治会の集まりとか…、そういったものには、新人は顔を出さないといけないと、主人は理解してくれています。
桑原:看護師として市議選に出たわけですが、宮崎県看護連盟や日本看護連盟からは、どんな応援がありましたか。
鈴村:日南市議なので、全国からというより宮崎県看護連盟と青年部の方たちが選挙前からリーフレットを一緒に配布してくださったり、黒木直子支部長は一緒に挨拶回りや施設訪問に行ってくださいました。選挙参謀はいなかったので、本当に心強かったです。また、看護連盟が各国会議員からたくさんの為書をいただいてくださいました。看護連盟からの為書もありました。石田まさひろ参議院議員は一緒に街頭や選挙カーで回ってくださいました。「国会議員が応援に来るなんて、市議選レベルではないことだ」と自治会長に言われました。私は日南市出身ではありませんが、連盟の青年部や若手会員がいてくれることで地元の方たちも応援に来てくださいました。最初から看護連盟の力がすごく大きかったです。看護師で丸亀市議会議員の神田やすたかさんは、選挙の進め方を電話で教えてくださいました。選挙では変な人も寄ってくるのではと不安になっているなか、リアルに損得なくアドバイスをくださる方の存在は、本当に貴重ですごく心強かったです。
桑原:市議になってから、日南市の市民の方、とくに看護師の方たちからの反応に変化はありましたか。
鈴村:特に変化したということはないのですが、施設を回っていると「頑張ってるね」って声をかけてくださいます。市民の方が不満に思ってるようなところを、汲み取って活動しているつもりなので、そこを評価してくださっているのかなと思ったりしています。一方で「看護師のことだけやっとっても、日南市はよくならんぞ」とか、苦言を言いに来る方もいます。看護のことだけやっているわけではないのですが、看護師であるのは事実ですから「はい!」って言って聞いています(笑)。
桑原:聞き上手になる(笑)。そういった方たちも、鈴村議員が制度を変えて住みやすくなってくれば、見方も変わって、いつかきっと感謝する時があると思います。
鈴村:そのくらいわかってもらえることを、やっていきたいと思っています。
桑原:全国には政治に関心を抱いている看護師もたくさんいます。最後に、そういった方たちに何か励ましの言葉とか、ご助言があればお願いしたいと思います。
鈴村:看護師の視点でいろんなことを見ていくことは、政治の世界でもすごく活きてくるんですよ。病院とか在宅の現場で、この人に何があったらよかったのかとか、この人の何が問題なのかということに一番最初に気付けるのは看護師だと思うんですね。そういった視点があって、変えたいなって思うことが、もしあるのであれば是非議員にチャレンジしていただきたいと思います。
桑原:チャレンジ精神ですね。
鈴村:看護師の視点は、どの地域でも必ず役に立ちます。私は今、災害に関する質問をしてます。何で災害なのかというと、訪問看護で行った先(寝たきりの状態の方)のお宅のすぐ近くに避難路としての階段があったからです。急な階段で健常者でも上るのがたいへんです。日南市は沿岸部に人が多く住んでいますが、そのほとんどは高齢者です。若い人なら走って逃げられますが、高齢者は階段を上ることができません。寝たきりの高齢者もしっかり逃げられる避難路が必要だと思いました。避難所の運営の仕方、個別支援計画、そういうのに細かくものを言っていけるのも看護師だと思います。
桑原:まさに生活者のそばにいる看護師の視点が、政治の場でも活かせるということですね。今日は、お忙しい中ありがとうございました。
宮崎市で生まれ、転勤の多かった父の仕事で宮崎市→えびの市→日南市(吾田東小学校)日向市との転校の多い子供時代を過ごす。18歳でサーフィンを始め日南の波に魅了され移住、日南市内の病院で勤務。「若い世代が政治から目を背けていては明るい未来はない」そんな強い思いから2年前の市議会議員補欠選挙に出馬のために退職し次点での落選(各投票数3864票)。2018年5月からは訪問看護ステーションで働き、H30年5月に第一子である男の子を出産。現在初めての子育てに奮闘中。
1980(昭和55年)宮崎市生まれ
宮崎看護専門学校卒業
資格:正看護師 ホームヘルパー2級
家族:夫、息子
趣味:マリンスポーツ アウトドア 読書
活動:看護連盟青年部・県南第二支部幹事
自民党青年局ひむか塾4期生
日南サーフィン連盟広報部(NSR)
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