2020.05.05
竹原直子さん(株式会社インスパイアード プロデューサー/看護師)
竹原さんは、看護師国家試験対策やケアマネジャー試験対策の講師、訪問看護師、ヘルスカウンセラー、 空間デザイナー、グラフィックデザイナーと様々なお仕事をされていますが、さらには映画プロデューサーでもあります。 竹原さんの夫、ジブリ出身クリエイターの増山修さんが原案・脚本を手掛けた映画「神楽鈴の鳴るとき」は、 河口湖に千年以上伝わる稚児舞をモチーフに、子どもができない夫婦と親を失した少女の絆を描いた作品。 故・大杉漣さんが出演していることでも話題の作品を竹原さんがプロデュースしています。
2014年、夫が書いた「神楽鈴の鳴るとき」という脚本が富士山河口湖映画祭で受賞し、 審査員長にその世界観をとても気に入っていただけました。 それがきっかけで、夫は映画化を決めたのですが制作途中でいろいろな問題が発生しました。 夫からプロデューサーをやってほしいと頼まれたのはそんな時でした。 私の返事は「え~!? ヤダ~」でしたけど(笑) 夫は、私が今までイベントなどのマネージメントを数多くしていたので、その力を借りたくて依頼してきたようなのです。
ただ、私としては、結婚したばかりで夫婦関係の構築を第一にしたかったんです。 しかし、実際のところ問題には対処が必要ですし、代わりになる人もいなかったので結局プロデューサーを引き受けることにしました。
プロデューサーといっても、いろいろなタイプがありますよね。 お金を工面したり、キャスティングをしたり。
私の場合は、夫を助けるのが仕事でした。
具体的には、予算交渉、スタッフやキャストとの連絡調整、人間関係調整、セカンドオピニオン、企画などあげるときりがありませんが(笑) あるとき、スタジオジブリの鈴木敏夫さんが「プロデューサーとは、どんなことがあっても監督の味方になる存在だ」とラジオでおっしゃっていたのですが、 それって夫婦と一緒だなと思い、しっくりきました。 お陰様で昨年、4年がかりで無事に映画は完成しました。これでやっと終わりだ!と思ったら、 監督から「完成するまでが半分で、ここからがもっと大変ですよ」と笑顔で言われ、目が点になりました(笑)
でも、確かにそうで、映画は観てもらってこそ完成です。 とはいえ、大々的に宣伝できる余裕はありませんのでファンが増えるようコツコツやっています。 上映会とトークショーを企画したり、他のイベントの中で上映してもらったりとか…。 命の向きあい方を描いた映画でもあるので、学校教育に取り入れたりできたらとも思っています。
また、日本的なものを描いているので、そこに惹かれるのかFacebookでは外国人からの反応もとても良いです。 もともと映画制作のはじめから海外への発信を視野に入れていましたので、英語字幕も作りました。 3月にはイスラエルで海外初の上映が行われます。
私は高校の衛生看護科を出ています。なので15歳で看護の世界に入りました。 その頃の自分は明確な夢など持っていませんでしたが、高校3年生の時に自分がどんな人間になりたいのか、ということを落とし込むきっかけがありました。 それは「親になる」というものでした。 子どもが岐路に立った時に「こっちだよ」と引っ張るような親にはなりたくない。 いくつもの選択肢を提示して子ども自身に選ばせ、それを後ろから支えるような親になりたい。 そんな人間になりたい。 だから、まずは小児専門の看護師を目指そう!と。 そこからすべてが始動したように思います。その後進学し、総合病院に就職しました。
ある時、スザンヌ・ゴードンの『ライフサポート』という本と出会いました。 アメリカの3人のナースを密着取材したノンフィクションなんですが、そこに登場するナースはまさに自分が望んだ「支える人」でとても感銘を受けました。 高校の時に明確になった自分の方向性と、ライフサポートという言葉が自分の中で融合した瞬間でした。
いろんな仕事に関わっていますが、私にとっては別の顔がたくさんあるということではありません。 誰かの支えに成り得るツールがたまたま複数あるだけのことで、すべて自分にとって方向性は同じなんです。 そして私はそれを「ライフサポーター」と表現しています。
でも、仕事って誰かのためにやっているようで、実は相手からいろんなことをもらっています。 患者さんと接することで、ずれていた思いが直されたり、患者さんから元気をもらったり…。
だから頑張れるんだなと思います。実は、誰かを支えているようで自分が一番支えられています。
(広報:千葉明彦 写真:紀善久)
(掲載:機関誌N∞[アンフィニ]2019年秋号)
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