2022.09.17
岡田利規
新潮社 定価 1980円
気鋭の舞台演出家による、15年ぶりの短編集。透明で見ることのできない、匂いもしない、「現代」が、小説の形で閉じ込められている。
あるカップルの平凡な生活を通してうっすらと立体化される、貧しくなっていく日本の姿(「楽観的な方のケース」)。地方を搾取し、過剰な光、広告、アナウンス、最適化された都市設計で旅人を圧倒し、へばりついてくるヴェノムのような「東京」(「ブレックファスト」)。別れた恋人のバンコクでの旅路を妄想する男を通してあらわになる、人々が共有してしまっている不穏な無意識(「ブロッコリー・レボリューション」)。
この空虚でおろかで身勝手な現代人たちの姿をみて、自分だと思わない人間はいるだろうか。不安定で暴力的で、ごくたまに一瞬だけ美しい光がほのかにさす彼らの世界は、不気味なほど自分が今いる場所そのものだ。
(紹介:Floating Stories)
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