2022.04.25
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/ 三浦みどり・訳
岩波現代文庫 定価 1540円
ウクライナにロシア軍が侵攻したというニュースが飛び込んできて『戦争は女の顔をしていない』を読み返しました。最近コミック版が出たので、そちらを読まれた方もいらっしゃるでしょう。
第二次世界大戦の時、ヒットラーの妄想から共産主義者を殲滅するためナチス・ドイツはソ連に侵攻しました(プーチンは、ウクライナはネオ・ナチスだと妄想し、ロシア軍を侵攻させました)。
ソ連では、祖国を守るため15歳から30歳の100万人にも及ぶ女性たちも従軍しました(第二次大戦下のソ連の戦死者は2000万人近いと言われており、ドイツに虐殺されたユダヤ人の数をはるかに上回ります)。シベリヤ、ベラルーシ、ウクライナなど、ソ連のあらゆる地域から彼女たちは駆けつけ、医療関係ばかりでなく、兵士となって銃をもち、あるいは戦車や戦闘機を操縦しました。ドイツが降伏した5月9日は、ソ連の戦勝記念日となりました。しかし、従軍女性の多くは戦後白い目で見られ、従軍したことを隠し通しました。また、信奉していた同志スターリンの非道ぶりも、戦後明るみに出ます。
アレクシエーヴィチは、従軍した女性たち500人以上にインタビューしてまとめた本書を発表し、彼女たちの存在に光を当てました。2015年に、ノーベル文学賞を受賞しています。アレクシエーヴィチはウクライナに生まれ、ベラルーシで文筆活動を始めますが、ルカシェンコ政権からは弾圧を受けてきました。
年若い女性たちが、命をかけてまで守るべき〝くに〟とは何か、難しい問題です。平和ボケした頭では、ただ、正しい戦争など一つもなく、殺すべきは人ではなく戦争そのものだ、と答えるしかないのですが。
(紹介:戦争は男の顔もしていない、たぶん)
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